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 10月上旬に開催された「ITU TELECOM WORLD 2009」を振り返る,というテーマで,富士通の伊東千秋副会長に取材した。ITU(国際電気通信連合)のハマドゥン・トゥーレ事務総局長をはじめ,多くのキーパーソンに会ったという伊東氏からは,面白いエピソードをたくさん聞くことができた。

 例えば,米シスコのジョン・チェンバースCEOは「もうネットワーク(情報通信網)の話はしない」と語ったという。もともとシスコは,ルーター開発から事業を始めた。現在は事業領域を広げているが,一般には「ネットワーク機器ベンダー」と認識されている。そのシスコが「ネットワークの話をしない」というのは何やらなぞかけのような話だが,その心は「ネットワークはもはやあって当たり前。その前提で,社会の根深い問題を解決しよう」ということのようだ。

 例えば,発展途上国の貧困問題がある。ITU TELECOM WORLDでも経済発展とICTは重要テーマの一つだった。発展途上国の代表からは「ICTでは貧しさは解消しない」といった意見がある一方で,多くの人が「携帯電話の普及率が10%上がると,GDPは1.6%(人によっては1.2%)上がる」との調査結果を引用していた。伊東氏いわく,発展途上国では「経済の発展のためには,道路よりも携帯電話が有効」ということになっているのだそうだ。

 あらゆる社会インフラの整備が同時進行している国では,日本の常識が全く通用しない。例えば,「モバイル・マネー」といえば,日本では「おサイフケータイ」であり付加価値サービスのイメージがあるが,銀行ネットワークが発達していない国では,携帯電話のIDが口座番号となり,携帯電話は唯一の入金・送金手段になる。携帯電話が先に普及すれば,先進国ほどの銀行ネットワークは不要になる。これぞ,“ネットワークが当たり前”から生まれた発想ということになるだろう。

 このほかには「気候変動」,「CO2削減」など,通信技術だけでなく社会問題もクローズアップされたのが印象的だった今回のITU TELECOM WORLD 2009。日経コミュニケーションは,このイベントを振り返りつつ今後の通信業界の方向性を展望する「2010年の通信業界展望」を緊急開催することにした。今後の通信技術の方向性,世界が抱える問題やキーパーソンの価値観を共有したい方にはぜひご参加いただきたいと思っている。