PR

 8日後に迫ったITpro EXPO 2009展示会(10月28~30日に東京ビッグサイトで開催)に事前登録された方には,「ITpro Magazine」という雑誌が届いていると思う。ITpro Magazineとして4号目にあたる「2009年秋号 EXPO版」で,筆者は編集側の取りまとめ役を担当した。

 50人・実質1カ月半という小規模のプロジェクトではあるが,それなりに得たものはあった。ちなみに50人というのは,筆者が何らかの形で雑誌づくりのためにかかわった人たちの合計であり,実際にはもっと多い。

 ITpro Magazineは,定型コラムやデザインのひな形が決まっているほかの雑誌とは違い,毎回,一から内容やデザインを作り上げるのが特徴である。雑誌の編集に長く携わってきた筆者ではあるが,これだけ多くの関係者と一緒に,これだけの短期間で一から作り上げるITpro Magazineの編集は,とりわけ難易度の高いプロジェクトと言えた。

 今回のプロジェクトで得られた,あるいは確認できた5つのポイントを紹介したい。読者の皆さんが日ごろプロジェクトで感じていることとどこが同じか,あるいは違うかを照らし合わせながらご覧いただきたい。

ポイント1:プロジェクト全体を「見える化」する

 どのプロジェクトでも「見える化」は欠かせない。何が目標で,その作成にあたり,誰がかかわっており,今どのような状況か,進捗度合いはどの程度かを一覧できないと,プロジェクトの運営に支障をきたす。

 わずか92ページの雑誌づくりでも,状況は同じである。短い記事では1ページ単位で書き手が異なり,しかもステークホルダー(利害関係者)が幅広い。編集部門,広告部門,展示会の運営を担当する事業部門がかかわっており,しかも編集にはITproの複数のメンバー,日経コンピュータ,日経情報ストラテジー,日経NETWORKなど他の雑誌のメンバー,編集委員がかかわっている。外部寄稿も多い。プロジェクトの状況を見える化する仕組みを用意しておかないと,何がどうなっているかがさっぱり分からなくなる恐れがある。

 雑誌づくりを見える化する基本ツールは「台割」と「進行表」である。台割とは記事内容・折(16ページまたは8ページ単位)・色・使用する紙などをページごとに示した設計図,進行表はデータ入稿から納本(出来上がった本の納入)に至る全体のスケジュールを示したものだ。

 今回のプロジェクトでは台割と進行表に加えて,各記事単位ごとにID,名称,担当者を明記した一覧表を作成した。IDは特集3のPart1の1本目なら「3-1-1」という具合に付け,それぞれの記事の進捗を一覧表に記入するようデスクに依頼した。

 これで一覧表を見れば,雑誌の全体像と各記事の状況を確認できる。何しろ余裕のないスケジュールだったので,一覧表はとても支えになった。漏れのチェックにも役立った。

ポイント2:まめなコミュニケーションを欠かさない

 これまでITpro Magazineの記事に協力したことはあったが,全体の取りまとめを担当するのは初めてである。過去3号を見返して,どのように決めたかが分からない部分も少なくない。一方で,ITpro Magazineの作成とITpro EXPO 2009展示会やフォーラムの構成決めはほぼ並行して進んでおり,構成の変更が相次いでいた。

 対応策としては,関係者とまめにコミュニケーションを取るしかない。記事の担当者に進捗を確認するのはもちろん,雑誌を作る上で不明な点を前任者や編集長に確認する,展示会やフォーラムの内容に変更がないかを確認するといった作業をできるだけ対面で進めた。

 メールで済ませられる場合はメールを使ったが,直接相談したほうが結局は早い場合が多かった。しかも直接話すと,「こういう点も気をつけたほうがいい」などと新たな情報を教えてくれることが多く,その点でも有効だった。

ポイント3:作業に関する知識と経験を持つ

 システム開発に関する知識と経験のない人が,システム開発プロジェクトのマネジメントは担当できない。雑誌づくりも知識と経験があったほうがよいのは確かだ。

 例えば,ポイント1で挙げた台割の作成は編集が担当する。台割づくりは単純ではあるが,「折の調整をどうするか」などちょっとした勘所がある。プロジェクト全体の進捗をみて「ここで頑張れば何とかなる」「ここが遅れそうだから,こちらを先行させよう」などいう勘が働くかどうかも,知識と経験がものを言う。

 自慢めいたことをいうつもりはないが,ゼロから雑誌や書籍を作った経験が役立ったのは間違いない。かつて,自分で台割を毎月のように作っていた時は面倒だと感じていたが,そういう経験が生きるケースがあるのだと実感した。自分がやっていることが面倒でやめたいと感じている人がいるとしたら,その経験はきっとムダにならず,どこかで役立つに違いないと強く言いたい。

ポイント4:動じない姿勢を保つ

 プロジェクトマネジャーで何より大切なのは,突発的な事態が発生した時も動じないことだと思う。知識と経験が十分にあり,動じずに冷静に考えれば解決策は見えてくる。

 ITpro Magazineの作成では,協力してくれたデスクやメンバーのお陰で大きなトラブルは発生しなかった。強いて挙げれば,最終校了日の夜中23時近くのこと。ある変更作業に担当デスクらが苦労していた。

 雑誌の校正作業は通常,紙の校正紙(ゲラ)に修正を入れ,デザイン会社がそれを反映させて再度ゲラを出して確認する,という作業を繰り返す。この作業になかなか手こずっている様子で,話を聞くと「紙の指示では1回で明確には伝えにくい。数回に分けて指示を出す」ということだった。

 しかし,もう夜中近い段階で,複数回に分けてゲラを出し,確認するというやり方ではいつまでたっても収束しない恐れがある。筆者は「直接,デザイン会社に赴き,画面を見ながらその場で修正してはどうか」と提案した。幸い,デザイン会社は筆者らのオフィスから歩いて行ける場所にあった。

 結局,デザイン会社で画面を見ながらその場で調整し,それなりの時間がかかったが無事完了した。ごく小さなエピソードではあるが,動じない姿勢を保っていれば,何とかなるということを実感した。

ポイント5:モチベーションを維持する

 情報システムも人間くさい面が多々あるが,雑誌はそれ以上に作り手の思いや気持ちが伝わりやすい。つまり,モチベーションがそれほど高くない状態で雑誌を作ると,それが読み手にも感じられてしまう可能性が高い。メンバーはもちろん,何より自分自身がモチベーションを維持できるかがカギを握る。

 ITpro Magazineは,ITpro EXPO 2009展示会に事前登録をしてくださった方々に送る無償の雑誌である。有償の雑誌とは位置づけが大きく異なる。正直なところ,有償の雑誌に比べ,コスト面をはじめとする制約も厳しい。

 それでも,いまの閉塞した状況を少しでも変えたい,そのお役に立ちたいという思いの強さは,これまでのITpro Magazineと比べても,さらに他の有償の雑誌と比べても負けていないつもりである。特に筆者が担当した特集1「ブレない,負けない! IT投資」に,その思いを込めた。それがどれだけ誌面に表れているかは,ぜひ実物をご覧になって確めていただきたい。

 本日(10月20日)中にITpro EXPO 2009展示会に事前申し込みいただければ,ここで紹介したITpro MagazineをICタグ付き入場パスとともに送付する。ぜひ奮ってお申し込みいただき,ITpro EXPO 展示会ならびにITpro Magazineを今後の活動に活用していただければと思う(ITpro EXPO 2009展示会への事前申し込みはこちら)。