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 全社を挙げたIFRS(国際会計基準)対応プロジェクトが始まることになった。そのとき,企業の情報システム部門はプロジェクト開始時から主要メンバーとして参加しているだろうか。参加している場合,どのような役割を果たすだろうか。筆者はこの点に大いに注目している。企業における情報システム部門の位置づけが,そこに如実に表れるのではないかと思うからだ。

 最初にお断りしておくと,ここではIFRSを日本で導入する意義について立ち入るつもりはない。IFRSについてはその意義を認める声も,意義に対して疑問を投げかける声も多く出ている。どの意見も傾聴すべき部分があり,各方面の識者による議論が活発化するのは悪いことではない。

 話題にしたいのは,日本におけるIFRSの全面適用(アドプション)が決まり,IFRS対応プロジェクトを全社で進めることになった場合,適用対象となる企業の情報システム部門はそのプロジェクトでどれだけ“存在感”を出せるかということである。ここで存在感を出せないようであれば,極論すれば情報システム部門の存在意義が問われることになりかねないのではないか。

 誇張が過ぎるように思われるかもしれないが,それくらい情報システム部門は真剣に自分の問題として取り組むべき話題であるという気がしてならない。IFRS対応プロジェクトでは,経営側と情報システム部門がともに経営の視点で「何をすべきか」を考えていかないとうまく進まない可能性が高いからだ。

中間報告にITに関する記述はほとんどない

 筆者がこのような危惧を抱くのは,IFRS対応プロジェクトに対して情報システム部門がどう取り組むべきかが,かなり見えづらいからだ。正解はないとみるべきだろう。

 今のところ,日本でのIFRSの取り扱いについて示した公式な文書は,金融庁 企業会計審議会企画調整部会が作成し,2009年6月16日に公開した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」だけである。この文書で,2012年をめどにアドプションを実施するかを判断し,ここでアドプションを実施することを決定した場合は2015年または2016年に適用を始める,といったロードマップを提示。日本におけるIFRSのアドプションの可能性が一気に高まった。

 この中間報告には,ITの話題はほとんど出てこない。財務諸表をXML形式で扱えるようにするXBRL(Extensible Business Reporting Language)をIFRSに対応させる必要があることと,企業全体で適切にIFRSを適用するために「各企業における具体的な会計処理や財務報告などの諸手続きを定め,それらを支える内部統制やシステムを整備するなど,各般の準備が必要である」と短く触れている程度である。

 J-SOX(日本版SOX法)のことを思い起こすと,中間報告とは位置づけが異なるので直接の比較はできないものの,金融庁 企業会計審議会が作成した「基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準)」や「実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)」といった公式文書では,ITに関する記述が非常に多かった。基準では,内部統制の基本的要素のひとつとして「ITへの対応」を挙げ,実施基準ではIT関連の記述に15ページ強を費やしていた。

 J-SOXとIFRSは全く別物だが,対応には共通点も多い(参考記事)。ITに関して言えば,J-SOX対応のときと比べ,そもそも頼るべき文書が少ないという違いを意識する必要がある。

会計システムや販売管理システムを変更するだけでいい?

 「何を言っているんだ。会計基準の変更に伴って,どの情報システムを変更すればよいかは,おのずと見えてくるはずではないか」。こんな意見を持たれる方もいるだろう。

 それはそれでもっともである。ITproや他のメディアでも,IFRS適用が情報システムに対してどのような影響を及ぼすかについて,多くの説明がある(参考記事1参考記事2)。当然,会計システムには影響が及ぶ。複数元帳への対応が必要なほか,IFRSが求める財務諸表の表示や区分方法に対応するなどが必要だ。

 販売管理システムへの影響も分かりやすい。どの時点で収益を計上するかの収益認識の変更に対応しなければならないからだ。ほかにも,固定資産管理,研究開発,企業結合(のれん),従業員退職後給付など,IFRSの適用によって影響が受ける分野を扱う情報システムの変更が必要になる。

 IFRSの適用により,どの情報システムに対して,どのような影響を及ぼすかを見定める作業は,IFRS対応プロジェクトでとても重要になるのは間違いない。作業も一筋縄ではいかないだろう。だが,企業における情報システム部門の存在感がどうであれ,不可能な作業ではない。

 問題は,IFRS対応プロジェクトにおける情報システム部門の役割は,それだけでは済まないだろうと予想できることだ。