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 新政権の温暖化政策がいよいよ動き出した。環境省は,化石燃料の使用に課税する地球温暖化対策税(環境税)の2010年度導入を政府税制調査会に要望。「2020年に温暖化ガスを1990年比25%削減」の中期目標達成に向け,具体的な一歩を踏み出した。

 新政権では,「地球温暖化対策税」と「排出量取引制度」の2つの制度設計を一体化して進める方針だ。前者は主に消費者を対象に,後者は主に企業を対象にする。地球温暖化対策税によって国民から広く浅く環境対策費を徴収し,太陽光発電など新エネルギーの普及や,省エネ設備導入などの対策費とする。さらにこれを原資として政府が排出権を購入し,必要とする企業にオークション(競売)方式で提供するというイメージである。結果的に,国内における温暖化対策コストを最小化することを狙う。

地球温暖化対策税は暫定税率廃止の「衣替え」?

 地球温暖化対策税は今回の税制改正の目玉であり,その導入時期に注目が集まっている。来年度に予定されているガソリンの暫定税率廃止と同時に,地球温暖化対策税を導入する,いわゆる「衣替え」の案が浮上してきたのである。暫定税率廃止は約2兆5000億円の減税になるため,2兆円規模の地球温暖化対策税を代替財源として確保したい財政当局の思惑が見える。ガソリンの値段が下がると消費が増えるので,CO2排出増を抑止するためにも,ガソリンへの新たな課税は必要という声もある。

 だが政府は,「暫定税率をいったん廃止した後,新たな形で環境税を導入するのが望ましい」と,「衣替え」を否定する考えを示している。これを「暫定税率廃止を掲げた民主党が,公約違反と言われるのを怖れた参院選対策」と見る向きもあるが,そうとばかりは言えまい。

 そもそも新政府は当初,「排出量取引制度の導入(2011年)」→「自然エネルギーの買い取り制度の見直し(2012年)」→「地球温暖化対策税の創設(2013年まで)」の順で政策を進める予定だった。排出量取引の導入によって削減しきれなかった分を環境税で補完していく考えである。それが,地球温暖化対策税の導入が前倒しとなった今,2つの制度設計を一体で行うことはかなり難しくなった。

グリーンITの費用対効果は高い

 新政権が進める環境政策で,企業が注目しなくてはならないのは,環境税よりもむしろ排出量取引制度の方である。特にIT業界ではデータセンターに課せられるCO2排出枠の行方に注視すべきだ。

 というのも,ここにきて政府の温暖化政策の方向性に変化が見られるからだ。麻生前政権は,太陽光発電や省エネ住宅など家庭・運輸部門での対策が中心だった。産業部門については,相対的に削減割り当て量が少なかった。ところが新政権では,排出量取引による産業部門の追加削減,電力部門のエネルギー転換などを対策の軸に据えるべく,動き出している。

 その理由は,CO2削減対策の費用対効果にある。麻生政権が掲げた中期目標「2005年比15%減」シナリオに基づき,日本エネルギー経済研究所が行った試算によれば,太陽光発電による削減コストが10兆~12兆円になるのをはじめ,省エネ住宅やエコカーなど家庭・運輸部門の対策は相対的に削減コストが高いことがわかった。これとは逆に,発電所のエネルギー転換やビルのエネルギー管理や情報技術の活用(グリーンIT)などが,費用対効果の高い対策となっている。

 「乾いたぞうきん」にたとえられる日本の省エネ効率だが,発電所やビルなどは格差が大きく,まだまだ絞れるという説も出てきている。例えば,産業技術総合研究所・エネルギー技術研究部門の小杉昌幸グループリーダーと歌川学主任研究員は,1990年比25%削減を達成するシナリオを研究している。その分析によると,「発電所と企業に短期で投資回収可能な省エネ技術や燃料転換を実施することで,2020年度に20.8%削減の可能性があり,これに自然エネルギー導入促進を加えれば,25%削減は可能」(日経エコロジー2009年12月号)という。

 具体的には,石炭火力の天然ガス火力への転換,クリーンルーム,さらにIT業界のデータセンターなどが,費用対効果の大きい対策として期待できるという。政府は現在,25%削減の達成シナリオの検討を進めているが,データセンターをはじめとするグリーンITが新たな重点施策(標的)となる可能性は高い。関連する事業者は今後の動向を見守る必要があるだろう。