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 「トップセールス」という言葉があります。一般には売上がNo.1の営業マンを指すことが多いようです。企業のトップ(社長や営業部長)が営業活動をすることを「トップセールス」と呼ぶこともあります。逆に、企業のトップを相手に営業することも「トップセールス」とも呼びます。どのトップセールスも、とても難しいことです。

 筆者は、あるパッケージ(本連載の前回と前々回で紹介したパッケージとは別のもの)を、企業のトップを相手に「トップセールス」したことがあります。商談の決済額が数百万円から数千万円の規模になると、現場の担当者だけでは決済できないので、社長や部門長を相手にしたトップセールスが必要です。今回はその経験談を披露させていただきます。もちろん、成功談ではありません。

プレゼンテーションが難しい

 筆者がトップセールスすることになった商品は、業務アプリケーションのパッケージソフトです。基本価格が200万円で、客先に合わせてカスタマイズすると最低でも500万円ぐらいになります。客先の規模によっては、数千万円になることもあるでしょう。もともと外国製品で、それを日本語化した製品の総代理店が、国内の販売店を募集していました。その募集に応じて、販売店の1つになったのです。

 いざ販売店になったものの、誰にどうやって売り込めばよいのかわかりません。そんな販売店が多かったのか、総代理店は販売店向けに、営業セミナーを開いてくれました。営業セミナーの講師は、経験豊富なベテラン営業マン。商品のプレゼンテーションとデモンストレーションの見本を示してくれます。はじめにプレゼンテーションをして、デモンストレーションにつなぎます。難しいのは、プレゼンテーションです。

 この営業セミナーで教わったのは、この商品が企業の効率化のために役立つことと、外国で多くの導入実績を持っていることを示す、ありきたりのプレゼンテーションでした。実際の営業では、それだけのネタでは不十分です。客先に合わせたネタを交えなければなりません。企業のトップを相手に、この商品がいかに役立つかを示すプレゼンテーションが必要です。筆者は、自分が営業している姿を思い浮かべて、胃が痛くなりました。

アポイントを取るのが難しい

 痛む胃を心配しつつも、見込み客を見つけて営業のアポイントを取らなければいけません。でも、企業のトップに知り合いなどいません。飛び込みで訪問しても、いきなり企業のトップが会ってくれる可能性は低いはず……筆者は、途方に暮れました。

 きっと、そんな販売店が多かったのでしょう。総代理店は、大規模な商品説明会を開いてくれました。これに参加した販売店は、参加した見込み客のリストを何社かもらえます。筆者は、この説明会に飛びつきました。いざ商品説明会をのぞいてみると、著名な経済評論家の講演と商品の紹介で2部構成になっていました。経済評論家のネームバリューのお陰で、多くの見込み客が集まりました。

 見込み客のリストをもらったものの、アポイントを取るのはやっぱり大変です。当時は、まだメールが普及していなかった時代だったので、見込み客に電話をかけました。企業のトップは、電話に直接出ません。取り次ぎの人に「○○社長をお願いします」と言うと、見知らぬ相手からの突然の電話なので「どのようなご用件ですか?」と聞かれます。「先日開催した商品説明会にお越しいただきましたので、より詳細なご説明にお伺いしたい」と告げると、「しばらくお待ちください……その件でしたら、説明は不要と申しております(ガチャン!)」。これで終わりでした。

 何度電話をかけても「席をはずしております」の繰り返しなので、相手も悪いと思ったのか「こちらから電話させましょうか?」と言ってくれたこともあります。「とんでもございません。またお電話いたします」と断ったのですが、しばらくして先方の社長から電話がかかってきました。筆者が要件を伝えると、「そんなことで、こちらから電話させるとは無礼な奴だ(ガチャン)」と怒られて終わりでした。結局、商品説明会に参加してもらえた見込み客リストから取れたアポイントは、1つもありませんでした。