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 「ニューノーマル(new normal)」という言葉をご存知だろうか。経済関係者の一部で流行している造語で、ひと言で説明するなら「2010年から始まる新しい常識、新しい常態、新しい価値観」である。筆者が所属する日経コンピュータは、四半期ごとに日本国内のIT投資動向や投資マインドを調査しているのだが、最近の傾向を見ると「IT投資動向でもニューノーマルが当てはまる」と強く感じている。

 そもそもニューノーマルという造語は、米債券運用大手ピムコのモハメド・エラリアンCEO(最高経営責任者)が、「世界経済はリーマンショックから立ち直った時、危機前の姿に戻るのではなく、まったく別物になっている」と、著書やセミナーで語ったことから広まったといわれる。

 これを受けて、経済アナリストらは「先行きが見通せない現状こそが“常態(ノーマル)”である」「従来の基準や価値観は通用せず、新しい“物差し”が生まれる」など様々な見解を示しているが、共通しているのは「元の姿(オールドノーマル)には戻らない」ことだ。

「投資額」だけでは測れない情報化の質

 経済環境がニューノーマルに変わるのであれば、当然、企業の情報化戦略や情報化投資に対する考え方も変わる。そして、すでに顕在化し始めている。その一例が、情報化投資動向を分析する際の視点だ。「情報化に積極的な企業はIT投資を増やす」、逆に「IT投資を増やす企業は情報化に積極的」という考え方が通用しなくなっている。ここでいう“情報化”とは、「情報を活用することで企業の競争力を高め、業績を上げること。そのためにシステムを構築したり利用すること」である。

 例えば、日経コンピュータ(1月6日号)に掲載した2010年度のIT投資増減見通しの調査結果では、2009年度より「減らす」という回答が37.6%と最も多かった。「増やす」は27.6%、「増減なし」が34.4%、無回答が0.4%である。この数字だけを見ると「2010年度もユーザー企業は情報化を積極的に進めない」と考えそうになるが、実際にユーザー企業を取材したりヒアリング調査すると様相は異なる。

 昨年9月~12月に約50社のCIO(最高情報責任者)やシステム部長から話を聞いたところ、当初の悲観的な予想が吹っ飛ぶくらい情報化に積極的な企業が多かった。先行きが見えず投資を増やせない現状を「常態」と受け入れ、競争力を高め業績を伸ばすための情報化戦略を立案・実行していた。

 そして各社は決まって、「IT投資は増やさない(増やせない)」と回答したのだった。情報化分野を絞ったり運用保守業務を簡素化して開発原資を捻出したり、クラウドコンピューティングといった新しいサービスを利用することで投資を増やさないようにしていた。

 当然のことながら、こうした企業は情報化に積極的であっても、IT投資動向を探る定量調査では「増減なし」や「減らす」と回答する。つまり「IT投資を減らす=(イコール)情報化に消極的」という考えが当てはまらないのだ。

 もちろん、IT投資を減らす企業すべてが情報化に積極的であるとは言えない。「IT投資に消極的な日本企業の姿勢には、将来の不安を禁じえない」(関連記事)という意見もある。それでも筆者は、IT投資額が増えない現状を悲観していないのは、IT投資の“ニューノーマル”がやってきたからと思うからだ。

投資力より“知恵と工夫”

 「投資を増やさずに情報化を推進する」ことが新しい常態になる2010年は、「IT投資額が多いか少ないか」ではなく、情報化を推進するための「知恵と工夫」がものをいうだろう。そして知恵と工夫が詰まった挑戦事例や成功事例を、業種や業態の枠を超えて広く共有することが、先行きの見えない時代を情報化で乗り切る方策の一つだと考えている。

 その一環として日経コンピュータは、今年も「IT Japan Award 2010」を開催する。優れた情報システムを構築し、それを使いこなして業務を革新した企業に、その成果を公開いただき広く共有することが狙いだ。

 この場を借りてITpro読者の皆様にお願いがあります。ニューノーマルを生き抜く挑戦・成功事例を、ぜひ「IT Japan Award 2010」にご応募ください。募集要項や応募方法については、本日開設した特設サイトをご覧ください。