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 絵に描いたもちはITの世界に結構ある。発表はされたものの出荷されずに終わった製品があれば、ビジネスに貢献しなかったシステムもある。特に、いわゆる“コンセプト”については、きれいな絵はたくさんあるものの、実用化した事例がなかなか出てこないことが多い。

 すぐに成果を求め、それが出てこないと、続々と登場してくる次のコンセプトにさっと関心を移してしまう、筆者を含む報道陣にも問題がある。時間の余裕があれば、ここ20年ほどの間に登場したIT関連コンセプト群とそれらに関する報道の量の推移を調べてみたいのだが、果たせずにいる。

 面白いのは、出世魚のように、名前を変えていくコンセプトがあることだ。ほとんど同じ話であるにもかかわらず、数年後に別名で登場してくる。それを批判するつもりはない。ただ、報道する側は「前と同じ話に聞こえます。どこが変わったのでしょうか」と質問しなければいけない。それができておらず、コンセプト名の記述だけが新しく、説明文の中身は以前からあった話のまま、という記事も見受けられる。

 うまく実現した事例があまり報じられていないが、それでも重要なコンセプトはある。その一つがSOA(サービス指向アーキテクチャー)であろう。実は、25年近く記者の仕事をしているにもかかわらず、SOAについて書いたことはほとんどない。理由は簡単で、SOAが話題になった時、それを書く記者が結構いたからである。

 「SOAジャパンワークグループの活動を通じて、一つの成果物ができ、それを公開することにしたので、話を聞いていただけますか」。旧知の方から、このような電子メールが昨年送られてきた。これが今回、SOAについて書くことになったきっかけである。年末に急な人事異動があり、すぐに応答できなかったのだが、1月の半ばになって、SOAジャパンワークグループの議長である寺尾実(NEC常務)氏に取材をすることができた。

 いきなり、SOAジャパンワークグループという名前を出してしまったが、これは、オープンな技術の標準化や認証を手掛けるコンソーシアムであるThe Open Group(オープングループ)の中にある。オープングループは複数のフォーラムやワークグループを運営している。その一つが2005年10月にできたSOAワークグループで、日本版として、SOAジャパンワークグループが2008年5月に作られた。メンバーには、NECやNTTデータといったIT企業だけではなく、日産自動車といったITを利用する企業も入っている。

 発足当時にも、寺尾氏に取材をしており、目的について次のような説明を受けていた。「SOAは正しい方向だと思うが、正直言って実装はまだまだ。ITのユーザーとベンダーが集まって、SOAに関する知見や事例を持ち寄り、グローバルなSOAワークグループの研究成果を参考にして、日本の中にSOAのノウハウを蓄積し、それをグローバルに還元していきたい」。SOAを絵に描いたもちと呼んだら失礼かもしれないが、おいしそうな絵であるSOAを食べられるように取り組もうというわけだ。

 昔からITの世界にいる方は、オープングループと聞くと、UNIXの標準化団体を思い出すかもしれないが、同じ組織である。ただし、UNIXの標準化はかなり前に完了してしまったため、オープングループは活動範囲をエンタープライズアーキテクチャー(EA)やセキュリティ、組み込みソフト、そしてSOAなどに広げ、こうしたテーマにおける標準作りやその標準にIT企業の製品が合っているかどうかを調べる認証を手掛けるようになった。最近は、エンタープライズアーキテクトの認定も手掛けている。

 つまり、UNIXの標準化を通して得た、標準作りと認証という活動を他分野に広げ、さらにIT企業だけではなく、実際にITを使う企業にも参加してもらうようにして、組織の継続を図ったわけである。コンソーシアム運営という点でなかなか興味深い試みと言える。