PR

在庫を“色”で仕分けしたゼロックス

 在庫仕分けの分かりやすい例として、ここでは富士ゼロックスの取り組みを紹介しよう。同社のSCM部は在庫を「G・Y・R」の3つに“色分け”した。G(グリーン)は売れ筋の回転在庫を指し、Y(イエロー)は滞留在庫を、R(レッド)が死蔵在庫を意味する。SCM部が主体になり、動きの悪いYとRに重点を置いて抑制策を練った。

 在庫全体の約30%を占めるYとRは信号の色と同様に危険なので、評価減や廃棄損を削減するためにも終売(販売打ち切り)後の余剰防止に念を入れる必要がある。手元にあるYとRが売れてなくなるのを期待するのはもちろんだが、まずは在庫をこれ以上積み増そうとする行動に待ったをかけなければならない。

 そこで、YとRを積み増す必要があるような商談はしないよう、営業部門に働きかけた。持つべき在庫はG(売れ筋)に絞り込んでいきながら、SCM部が営業部門の販売対象を売れ筋のGに誘導していく。

 「不況下で、めったに売れない機種の商談を進めるのは、在庫確保の面でも部品調達の面でもやっかいだ。営業部門にこの事実を理解してもらう」(中澤菊男SCM部計画管理グループ長)。特に減産のインパクトが大きかった2009年3月期の第4四半期は、売れ筋特化の方針をSCM部が明確に打ち出し、営業部門に伝え続けた。

 SCM部の役割はそれだけではない。同部に所属する「SCPM(サプライチェーン・プログラムマネジャー)」と呼ばれる担当者を商品企画の初期段階から開発現場に派遣した。「この機種は本当に必要なのか?」と商品開発部門やマーケティング部門に疑問を投げかけるためだ。企画や開発の部隊はついつい機種を増やしがちだが、SCM部はあくまでも在庫仕分けの視点に立ち、仕分けに有利な機種の絞り込みを訴えている。

 SCPMを組織したのは2006年4月。ゼロックスはそれ以前からも、開発やマーケティングの各部門に対し機種の数を抑えるように働きかけてきたという。しかし、「お願いするだけでは実現したりしなかったりと、結果が出たとこ勝負になっていた。そこで相手部門任せの体制を改め、SCM部が主体的にかかわることにした」(林久紀SCM部長)。

リコーの仕分け人が社内外に警鐘を鳴らす

 ゼロックスに限らず、製販一体のビジネスモデルをグローバル展開している複合機業界は、世界で最も在庫仕分けが進んでいる業界といってよい。リコーで全社構造改革を担当する遠藤紘一取締役副社長執行役員CSO(最高戦略責任者)も、在庫仕分けには一家言を持っている。遠藤副社長のことはこのコラムでたびたび紹介してきた(リコー流の業務改善「TTY」のその後トヨタ流が「なぜなぜ5回」なら、リコー流は「TTY」)。

 遠藤副社長のところには「在庫を減らしたい」という相談が社内外から数多く寄せられる。その際、相手に必ず確認するのが、在庫の「ステータス管理」ができているかどうかだという。「在庫を減らせと叫ぶ前に『健全な在庫』と『健全でない在庫』を分けて議論できる体制を作らなくては駄目だ。その努力なしに、単に在庫を減らせとか、在庫をKPI(キー・パフォーマンス・インジケーター、重要業績評価指標)にするとか言っても何の意味もない」。実際、リコーの在庫ステータス管理は徹底している。製販の各部門で最大13種類のステータスを使い分け、世界中の拠点から毎日ステータス情報を収集し、在庫の変動を監視している。

 日経情報ストラテジーの2010年4月号(2月末発売)ではリコーの事例も含め、過去1年半で進んだ在庫仕分けの実例を詳しく解説した。リーマンショック後に大混乱に陥ったSCMを立て直すため、各社が奔走した生々しい事例や証言が満載だ。ぜひ、参考にしていただきたい。