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 無線LANは携帯電話やゲーム機など身近なものに搭載され,利用頻度が高まってきた。今,家庭向けの無線LANアクセスポイントを買うなら,高性能にもかかわらず価格が低下してきたIEEE802.11nだろう。量販店での実売価格は1万円前後。ある無線LAN機器ベンダーの場合,アクセスポイントの販売台数のうち8割程度が11n対応機器という。

 企業向けの製品でも11n対応機器の低価格化が進んでいる。「米アルバネットワークスのアクセスポイントの場合,2008年初頭と比べて今では半分以下」(ユニアデックス)まで価格が下がっているのだ。

11nに統一したいが,なかなか難しい

 しかし実際に使うとなると,ちょっと問題もあるようだ。日経NETWORK 2010年4月号で無線LAN特集を執筆するため,インテグレーター数社に取材をした。すると,企業で11nを導入するときのクライアントの問題点が浮かび上がってきた。

 まず,11n対応のクライアントがまだ少ないこと。多くの企業では,まだ11n対応のノートパソコンが少なく,下位規格(11a/b/g)対応の方が多い。ノートパソコンを買い換えて11n対応にするとしても,買い替えのサイクルは5年など数年単位なので,すぐには11n対応クライアントがそろわない。このような場合,11nと他の規格を共存させるか,11n機能をオフにするかのどちらかで運用する。

 共存させると,下位規格の通信時間が長いのでそれを待たねばならず,11nの高速さを活かせない。また,11nで通信するとはいえ,下位規格にも一部理解できるフレームフォーマット(ミックスモード)を使うので遅くなる。

 このほか,USBタイプやPCカードタイプといった外付けのクライアントを使うときにも問題がある。自社に必要な条件に適うものが必ずしもあるとは限らないのだ。伊藤忠テクノソリューションズが自社で11nを導入するため,2009年4~6月に外付けのクライアントを検証したところ,条件に合う製品は4製品中一つしかなかった。条件とは,(1)最大300Mビット/秒の伝送速度,(2)認証方式としてEAP-TLSに対応,(3)周波数帯は5GHz帯(W52/53/56にすべて対応)──の三つだけだ。

11nだけに残る相性問題

 また,11nを導入したことで起こったトラブルを聞くと,原因は決まってクライアントだった。家庭と違い,企業では多種多様なクライアントが接続する。一部のクライアントは,何度やってもつながらない,接続完了までに時間がかかる,スループットが出ない,といったことがあるという。これは「規格の解釈の違い」によるものが多い。そもそも規格に沿ってないものもあるそうだが,応答を返すタイミングだったり,細かな部分で違いがあるとうまくつながらないのだ。

 11n対応機器(ドラフト2.0版)が出たころは,どちらかというとアクセスポイント側がまだ熟していないというイメージがあった。例えば,LANケーブルで給電するPoE(Power over Ethernet)への対応だ。11n対応機器は複数のアンテナを使って通信するため,従来の製品に比べ消費電力が高くなる。実際,PoEで供給する電力の上限値を超えてしまう製品もあった。しかし,今は無線LANチップの消費電力が下がったことに加え,機器側でも改良が加えられPoEの問題は解消されているという。

 今,11nを導入するならクライアントをきちんとチェックすることが大事だ。かつては下位規格でも同じような相性問題があったが,今ではほとんど聞かない。無線LANはつながって当たり前とさえ思ってしまう。しかし11nだと話は別。アクセスポイントとクライアントの“相性”をしっかり確認しておきたい。