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 いま、編集部の記者がスマートフォンをテーマにした特集を書こうとしている。といっても、ただ「スマートフォンって素敵」という記事ではない。企業でスマートフォンをどうやって使えばいいか、がメインテーマである。もちろん、スマートフォンから派生した感のある、iPadのようなタブレット端末(スレートPC)も視野に入る。

 携帯電話の企業利用は、珍しいものではない。従来から、携帯電話を業務に使うという話はあったし、筆者も記事を書いたことがある。それでも今なお、携帯電話の業務利用が広く浸透しているという印象はない。ただ、iPhoneやAndroid端末といった新手のスマートフォンの登場によって、企業ユーザーの利用が活発化してきた。携帯電話事業者やシステムインテグレータに取材してみると、かなり引き合いは多くなっているらしい。NTTドコモでは、全加入者のうち現状では1割程度の法人ユーザーを、2012年には2割にまで増やそうと考えている。理由の一つが、「スマートフォンは従来型の携帯電話とは別に持つことが多いから」である。

 従来の携帯電話ではいまいちだったのに、どうして今のスマートフォンだとこれほど盛り上がるのか。

 行き着く答えは「端末の使い勝手がいいから」。画面が大きいこと、タッチ操作できること、手軽に画面を拡大・縮小できることなどが企業の目を引くのだろう。CPU性能の向上やソフトウエアの進歩によって、“もっさり感”がなくなってきていることもあるだろう。コンシューマ向けならここで、魅力的なアプリケーションがたくさんあることも理由の一つに挙げられるだろうが、企業での利用となるとこれは理由になりそうもない。結局、端末の便利さ・快適さがきっかけのように見える。

 iPadの場合は、もっと顕著にその傾向が表れるかもしれない。出荷が始まって1カ月強しかたっていないが、既に企業での採用が始まっている。先日あるインテグレータに取材した際に、ちょっと驚く話を聞いた。「中には、もうiPadを数百台購入したんだが、どうやって業務に使ったらいいか提案してほしいと依頼してくるユーザーがある」という。それほど、企業ユーザーが便利さ・快適さ・面白さに心を動かされているということだ。

利便性に付いてまわるトレードオフ

 こうした場面では必ず、セキュリティの議論が付いてくる。携帯端末を業務に使い、外に持ち出すとなると、企業としては情報漏えい・紛失が気になる。もちろん個人でも紛失した場合のプライバシー侵害などが気にならないわけではないが、そこは便利さ・快適さには勝てない。これに対して企業の場合は、社会的責任とかコンプライアンス(法令順守)の観点から、セキュリティが重視される。

 さて、ここからようやく本題である。個人情報保護法が施行されてから、過剰に反応し、業務効率の低下を顧みずにノートPCの持ち出しを禁じる企業が相次いだ。ただ、今はそれを反省する企業が増え、そしてスマートフォンやタブレット端末の導入という動きが出てきている。背景には、リモートワイプや仮想デスクトップといった技術の進展もあるが、やはりスマートフォンやタブレット端末の便利さ・快適さにはかなわなかった、ということだろう。

 セキュリティと利便性のトレードオフは、どの分野でも指摘される。例えばブラウザー。Webページを閲覧しただけで感染するマルウエアが登場し、ブラウザでのJavaScript利用が問題視されている。

 しかし、便利さを優先し、JavaScript利用をやめる例はまずない。Firefoxの場合なら、スクリプトの動作可否を選択できるNoScriptやRequestPolicyといったアドオンがあるが、これも結局、使ってみると不便このうえない。結局、たいしたチェックもせずにスクリプト動作を許可することになる。

 どうせ最終的に便利さ・快適さに押し切られるなら、初めからどうせ誘惑には勝てないと割り切って、利便性を優先して物事を考えたらどうなのだろう。セキュリティを考えなくてもいいといっているわけではない。「使いたいものを使うこと」や「無理して嫌なことをしないこと」を前提にし、足りない部分には運用面も含めた対策を講じるほうが、議論が建設的だし、健全だろうということだ。