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 国際会計基準IFRSの国内上場企業への強制適用は、連結財務諸表を対象に早ければ2015年~2016年に始まる---。これが、IFRSの国内導入に関する“公式のスケジュール”だ。

 「早ければ」には、二つの意味がある。一つは、2012年をめどに強制適用を実施するかどうかを判断すること。もう一つは、強制適用を決定した場合に、実務面の対応のために少なくとも3年間の準備期間を確保することである。

 このため、2012年の年初に強制適用を決定すれば、2015年3月期決算がIFRS移行の最速のタイミングになるし、適用判断が2012年4月以降になれば最速でも2016年3月期決算からになる。さらに、その時点での状況判断によっては、3年間の準備期間を延ばす可能性もあるし、企業の財務規模などで分けて段階的に移行させていくことになる可能性もある。

売上高1兆円を超える大企業がずらり

 だが、すでに“遅くとも2016年度から”IFRSに移行しなければならないことが確定的になった企業群がある。トヨタ自動車、ホンダ、コマツ、日立製作所、東芝、三菱電機、パナソニック、ソニー、キヤノン、リコー、富士フイルムホールディングス、三菱商事、住友商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、野村ホールディングス、オリックス、コナミ、NTT、NTTドコモ、ジュピターテレコムなどだ。売上高1兆円を超える大手企業がずらりと並ぶ。

 これらの企業の共通点は、米国の会計基準で連結財務諸表を作成していること。ニューヨーク証券取引所など海外の市場で資金を調達するために、米国会計基準を使って米証券取引委員会(SEC)に連結財務諸表を提出している。こうした企業は、日本国内でも、米国基準の連結財務諸表を提出・開示できるという特例の適用を受けている。

 ところが、この特例を定めた連結財務諸表規則が、2009年12月の内閣府令で改正・公布された。「国内での米国基準による開示は2016年3月期まで」に限定するという内容である。

日米で上場するならIFRSが必須に

 この結果、連結財務諸表に米国基準を採用している上記の企業各社は、遅くとも2016年4月に始まる会計年度から、別の会計基準に切り替えなければならなくなった。日本で認められる会計基準は、日本基準かIFRSのどちらかであり、米国市場では日本基準による上場が認められていない。つまり、日米で上場を維持するにはIFRSしか選択肢はない。

 この2016年4月からという切り替えタイミングは、強制適用の“公式のスケジュール”の最速タイミングよりも、1年間の余裕がある。とはいえ、公式スケジュールは状況によっては後ろにずれる可能性があるのに対し、米国基準を使えなくなる時期は確定したもの。いわば“しりを切られた”格好だ。

 米国基準採用企業からは、IFRS強制適用の是非について判断が定まっていない段階で、IFRSへ移行せざるを得ない状況が確定したことに対して、不満の声も漏れてくる。一方、IFRSの強制適用を基本路線とする金融庁の企業会計審議会や、基準策定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)にしてみれば、名だたる大企業がこぞってIFRSへの移行に本腰を入れざるを得ない状況を“うまく作り出せた”ことになる。

 大手企業がそろって動き出せば、監査法人やITベンダーも実践の場でIFRS対応の経験を積み、ノウハウを蓄積していくことができる。IFRS移行支援ビジネスの成長が見込めるとなれば、監査法人やITベンダーでは優秀な人材の投入が加速するため、企業にとっても恩恵を享受できるだろう。

 また、企業の財務・業務へのインパクトが大きいと見込まれる収益認識(売り上げ計上)、減価償却、原価計算などの会計処理については、企業や監査法人の理解が進み、課題の洗い出しや対応策、基準改訂案の検討なども促進されるはずだ(財務・業務への影響の詳細は日経BPムック「国際会計基準IFRS完全ガイド2011」で詳しく解説)。結果として、強制適用の際に多数の企業での移行をスムーズにする効果が見込める。

 米国基準を採用している大手企業各社には、IFRSへの移行や、それをきっかけにした経営改革、さらには基準の改善の先導役を果たしてもらえればと思う。