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 先日、ITproを眺めていたら「NTTドコモがiアプリDX開発ツールを個人開発者などに向け公開、GPSや課金が利用可能に」という記事が目に入ってきた。

 「いったい、いつのニュースなのか?」と思って日付を確認したところ、2010年8月26日である。筆者は近年、iアプリ関連の動向をまったくウォッチしていなかったので、「まだ公開していなかったのか」というのが最初に抱いた正直な感想である。そしてドコモには申し訳ないが、“今さら”という印象をつい抱いてしまった。

 筆者がこうした印象を持つのは、グーグルやアップルが開発者をどのように支援してきたかを見ているからだ。

 グーグルは(厳密にはグーグルが主導するOpen Handset Allianceは)初代Android端末「T-Moblie G1」の発売前から開発者向けキット「Android SDK」を提供している。それどころか実機がない段階で「Android Developer Challenge」というアプリ開発コンテストまで開催していた。

 アップルは当初、ネイティブアプリケーションのSDK提供を渋っていた。しかし、多くの開発者からの要望に応える形で初代iPhoneの発売約8カ月後に「iPhone SDK」(現iOS SDK)を公開した。

 その後は周知の通り、AndroidとiOSはともに世界中の開発者が熱狂するプラットフォームへと急成長している。現時点では、iOSとAndroidは世界的な開発者獲得競争に勝利したといえるだろう。

強力な開発者の支援体制が不可欠

 グーグルやアップルとドコモの違いは何だろうか。厳しい言い方をすると、通信事業者であるドコモはソフトウエアの文化を理解していなかった、ということではないか。多くの優れたアプリケーションは、たった一人のプログラマによって作られている。この事実を過小評価していたのだろう。

 グーグルやアップルに限らず、米国のIT企業は「開発者をいかに引きつけるか」を非常に重視し、巨大な投資をしている。開発ツールや多機能なクラスライブラリを提供するのはもちろん、課金システム、膨大なチュートリアルと技術文書、サンプルプログラムを用意する。

 開発者向けサイトやSNSをオンラインで提供するだけではなく、定期的に開発者向けイベントを開催し、開発者コミュニティを盛り上げる努力を惜しまない。時には経営幹部が「デベロッパーズ!デベロッパーズ!」と叫ぶほどだ。

 米国企業が用意するプラットフォームには、このように質・量ともに圧倒的な開発支援環境が存在している。ブログラマはこれらを使うことで、プラットフォームに依存した本質的でない部分にあまり悩むことなく、プログラムの本質的な部分の開発に集中できるのである。これは個人レベルでも高度なアプリケーションを開発できる、ということを意味する。

 今後、日本企業がソフトウエアやモバイル端末で世界的な成功を目指すのであれば、米国企業のように強力な開発者の支援体制を整える必要がある。iPhoneのように中学生でもアプリ開発に参入できるくらいにしきいを低くしないと、開発者獲得競争には勝利できないだろう。着々とゲーム機としての性格を強めているiPhone/iPadを見ると、ソニーや任天堂も次世代のゲーム機ではSDKと課金システムの公開が必須となってくるのではないか。

 iPhoneやAndroidの登場以前に、ドコモが広く個人を含む世界の開発者へ向けてiアプリ開発ツールと課金システムを提供していたら、どうだっただろうか。ひょっとすると、ドコモの悲願であったiモードの海外展開に成功していたかもしれない。ITproに「5年くらい前に開放してくれればよかったのに」との記事が公開されているが、まったく同感である。今後、ある程度の巻き返しが可能になるのか、“今さら”という印象通りに終わるのか、開発者の視点で見守っていきたい。

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