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 「業務改革と並行してシステムを最適化することは、喫緊の課題。クラウドコンピューティングは、積年の課題を一気に解決できる可能性を秘めている」---。

 これは民間企業の話ではない。42都道府県のCIO(最高情報責任者)や情報化推進責任者が一堂に会して8月末に開催された「都道府県CIOフォーラム」の年次総会で、鈴木正司会長(岐阜県総合企画部次長)が2日間の議論を締めくくる中で地方自治体の立場で語った言葉である(フォーラム報告記事はこちら)。

 市区町村や都道府県などの地方自治体では今、クラウドコンピューティングへの関心が急速に高まっている。背景にあるのは、景気低迷による税収の減少と、社会保障の充実に伴う支出の増大だ。

 財政収支が厳しさを増し、国からの十分な支援も期待しにくい状況下で、クラウドコンピューティングは、行政情報システムの構築・運用や事務の効率化を通して行政コストを大幅に削減すると同時に、住民サービスを向上させる電子自治体の基盤にもなり得る技術として、自治体の情報政策担当者の注目を集めている。

 8月のフォーラムでは、「庁内サーバーの統合・仮想化(プライベートクラウド)」と、市町村をまたいだシステム共同利用を実現する「自治体クラウド」を2大テーマに議論を展開した。どちらも参加者の関心は非常に高く、先行して取り組む都道府県には多数の質問が寄せられた。ここでは、アンケートや議論で得られた自治体の問題意識のポイントを整理してみよう。

庁内サーバーの統合は部門間調整が壁

 税務や社会保障、財務会計、文書管理など、業務ごとに設置された庁内のサーバー群を統合・仮想化する「プライベートクラウド」の効用については、経費の削減・効率化への期待が非常に大きい。具体的には、ハードウエア/ソフトウエアの導入・運用費、設置スペース、構築・運用の人件費、電力費用などである。業務ごとに構築されたサーバーシステムは稼働率が低くなりがちで、“見えない無駄”を生んでいるとの指摘もある。

 また、2009年度に実施された定額給付金制度のような一時的な業務に柔軟に対応したり、業務スペース内に置かれることもあるサーバーのセキュリティを高めたりする効果も見込めるという。

 一方、課題については、個別システムを所管する各業務担当課と調整しながらの計画立案・調達の難しさを訴える声が最も多い。「サーバーのハードウエア予算を業務担当課からシステム部門へ移管し、担当課が費用負担に応じる仕組みを整えてからでないと話が進まない」という。予算を管理する財務部門との連携を確保したうえで、全庁のシステム所管課を横断するようなシステム改革推進体制を整えてある自治体は、まだまだ限られる。

法定業務でもパッケージ利用は簡単ではない?

 市町村をまたがって情報システムを統合・集約する「自治体クラウド」の導入は、総務省が強力に推し進めようとしている。都道府県は市町村の取り組みを支援する立場にあり、47都道府県中9道府県がすでに市町村の業務標準化のための調査や調整、技術的な支援に乗り出している。

 総務省は、住民基本台帳や税、国民年金、介護保険などの法定業務については、クラウド上で提供するパッケージソフトを一律に用いることを想定している。都道府県のCIOや情報政策担当者も、法定業務がクラウド利用に適しているとの見方ではおおむね一致している。

 ただし中には、実現の難しさを指摘する声もある。例えば住民基本台帳や戸籍、印鑑証明などの個人情報を扱うシステムに関しては、セキュリティ上の不安を解消できるほど十分な説明が行われていないと感じている。また、法定業務であっても人事給与システムについては、個人情報の漏えいリスクや、職員組合を説得することの難しさから、クラウドへの移行を不安視する見方もある。

 ほかにも、「町村レベルでは問題ないが、市レベルだと過去の経緯から各種業務システムのカスタマイズが多くなっており標準化が難しい」という指摘もあった。福祉・医療や、過疎・定住対策なども、市町村の裁量による上乗せ幅のばらつきが大きく、パッケージ利用の前提となる業務の標準化の障害になる恐れがあるという。

市区町村も対象に「自治体情報化会議」を開催

 クラウドコンピューティングの業務活用は民間企業でも始まったばかりであり、ITベンダーの間でも基幹業務への適用に関するノウハウや知見の蓄積は十分とは言えない。国の方針に沿ってクラウドの導入を進めることになった自治体の情報政策担当者にとって、不安の種は尽きないだろう。

 そうした自治体関係者の疑問にこたえるために、日経BPガバメントテクノロジーは「自治体情報化会議 2010 Autumn ~クラウド活用と住民サービスの向上に向けて」を企画した。「自治体でのクラウド活用の可能性と課題 ~コスト削減、サービス向上、業務標準化、セキュリティの視点から」(仮)をテーマにしたパネルディスカッションなどを実施する。

 登壇するパネリストは3人。山形県置賜地区7市町での基幹業務へのクラウド導入に先行して取り組み、総務省の自治体クラウド推進本部の有識者懇談会にも参加している長井市企画調整課長の遠藤健司氏。総務省の自治体クラウド実証事業で大分県・宮崎県・徳島県と共同利用する県域データセンターを構築・運用し、共同利用型業務アプリケーションや業務の標準化を指揮する佐賀県の最高情報統括監(CIO)である川島宏一氏。そして、市長をトップとする推進組織で行財政改革とIT推進を一体的に進めている藤沢市で、総務部担当部長・IT推進課長を務める須藤俊明氏である。

 基調講演には、「e都市ランキング」でベスト3常連の千葉県市川市の前・市長で、現在もIT戦略本部の本部員として電子行政の推進に携わる千葉光行氏が登壇し、「国民本位の電子行政とは」と題して講演する。

 市区町村・都道府県で情報政策や業務改革に携わる方は、今後の自治体システムや電子行政の課題や対応策を見通すために、ぜひ足を運んでいただければと思う。ディスカッションで取り上げるべき論点があれば、この記事へのコメントとしてお知らせいただきたい。