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 「インタビューを受けて、自分のノウハウを整理できました。面白かったです」。取材を終えたとき、たまにこう言ってもらえることがある。記者冥利に尽きる瞬間だ。

 記者は、要件定義、設計、プロジェクトマネジメント、人材育成などさまざまなテーマでスキルの高いITエンジニアに取材し、現場のノウハウを聞き出して記事にしている。その際、取材に応じてくれたITエンジニアが、自分のノウハウを整理できているとは限らない。実際には、「現場の問題とそれを解決するノウハウは何かと聞かれても、よく分からない」と言われるケースのほうが多い。「広報に指示されて出てきただけで、取材を受けるのは気乗りしない」とおっしゃる方もいる。

 これは、ITエンジニアが要件定義で行う“ある作業”の状況と似ていないだろうか。そう、利用部門へのヒアリングである。利用部門の代表者は、多くの場合、現場の問題と解決策を整理できていない。本業で忙しいので、協力的とは限らない。

 であれば、記者が日ごろ実践しているヒアリング術が、みなさんの要件定義でも役に立つかもしれない。そう考え、記者のノウハウを三つピックアップしてみた。

目的とアウトプットを伝え、聞きたいことを分かってもらう

 一つめは、取材の冒頭で相手にその目的を伝えることだ。

 例えば設計レビューのノウハウをまとめた記事の取材では、「どうすれば“頑張るだけのレビュー”から脱却できるか。時間がないなかでも実践できるレビューのノウハウを読者に示したい」と話した。

 さらに過去の類似記事をアウトプットのイメージとして示し、「今日聞いた話はこんな記事になります。ざっと見てお分りいただけるように、精神論にとどまらず、仕組みや手順に落とし込みたいのです」と迫る。こうすることで、記者が何を聞き出そうしているのかについて理解してもらえる。

ほめながら真剣な態度で聞き、協力を得る

 二つめは、ほめること。これは、協力的になってもらう上で欠かせないと考えている。取材の冒頭だとこんな感じだ。

 「御社で最もレビューのスキルが高い人を出してほしいとお願いしたところ、それなら○○さん(取材に対応してくれるITエンジニアの名前)だということで、今日ご協力いただくことになった次第です。御社の代表として、ぜひ取材にご協力ください」。

 さらに取材中に相手からいい話が出たらすかさず、「なるほど」「素晴らしい」「勉強になります」「さすがです」といった合いの手を入れる。その際には、相手の目を見る、深くうなずく、熱心にメモを取る、といった真剣な態度で話を聞く。うまくいくと、相手はどんどん乗ってくる。

常套句と図式化で相手に深く考えさせる

 ただし相手が一方的に話す内容をただ聞くだけでは、取材にはならない。その場で相手に深く考えてもらってはじめて、本質的なノウハウを聞き出すことができる。そのためによく使う常套句がいくつかある。

具体化、例示
「例えば?」
「○○のケースだと具体的にどうなるか教えてください」

対比による特徴抽出
「普通のITエンジニアのやり方と、どこがどう違うのですか?」
「そのやり方は若手のITエンジニアでも実践できますか?」

目的・原因の確認
「どうしてそうするのですか? 逆にそうしないと、どうなりますか?」
「何がきっかけで思い付いたのですか?」

 こうした質問を重ねていくうちに、相手が日ごろ実践しているやり方から、ほかのITエンジニアがまねできるノウハウがだんだん浮かび上がってくる。そのときには取材ノートの紙やホワイトボードを使い、相手がやっていることの手順、普通のITエンジニアのやり方などをその場で図式化し、相手に見せながら話を聞くと効果的だ。そうすることで、相手は頭の中が整理され、より深く考えてくれるようになる。

BABOKで自分のノウハウを整理しよう

 ここまで、記者がつちかったヒアリング術を三つ紹介した。「そんなことはもうやっている」と思った方が多いかもしれない。しかし往々にして、現場でつちかったノウハウは自分自身の中で整理しにくいものである。ノウハウを整理すれば、新しい発見や気付きが生まれ、さらに発展させられる。

 要件定義のノウハウを整理する上では、最近話題の「BABOK」が役に立つ。これは、「ビジネスアナリスト」という新しい職種の役割を明確化するために生まれた知識体系である。「要求アナリシス」「エンタープライズアナリシス」「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」といったビジネスアナリストが行うべき六つの活動と、そのために必要な個人的資質・行動特性などを表す「基礎コンピテンシー」が定められている。ビジネスアナリストの重要な役割の一つが要件定義なので、BABOKはITエンジニアにとって要件定義のスキルを整理するのに極めて有用というわけだ。

 日経SYSTEMSは11月8日に東京・秋葉原で、このBABOKを踏まえて要件定義の実践ノウハウを整理しながら身に付ける「BABOKを現場で実践! 手戻りなしの要件定義テクニック」というセミナーを開催する。興味のある方は、ぜひご参加いただきたい。