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 2005年1月に出版された自著「ネットワークエンジニアの心得帳」の初版が2010年9月に完売になり、再版されるこ とになった。これまでに出版した6冊の本のうち4冊は1年程度で再版されていたことを考えると、この本は息長く読まれたことになる。

 今回の再版がこれまでとまったく違うのは電子書籍であることだ。紙の本はある程度まとまった部数を増刷するためコストがかかり、売れなかったときのリスクが大きい。電子書籍は1冊あたりの原価がほぼゼロだからリスクがない。小部数しか売れない専門書も出版しやすい。紙の時代は「本を出してもらう」ことのハードルが高かったが、電子出版になれば一気に「著者」の裾野が広がるだろう。「ネットワークエンジニアの心得帳」についてはブログに感想を書いてくれた人が多い。一番気に入っているのは吉村剛昌@常に挑戦者さんの感想だ。

 この本がこれからも吉村さんのような若手エンジニアに読まれ続ければ、著者冥利につきる。さて、今回はロボット・デジカメを手がかりに“Share&Shower”という新しいコミュニケーション形態と、情報活用における画像のメリットについて述べたい。

ロボット・デジカメ登場

 先日、5年ぶりに高校の同窓会があった。愛媛県立西条高等学校理数科5回生のクラスだ。40人中、東大・京大進学が7人、医学部8人、歯学部3人という出来るクラスだった。

 この同窓会に脳神経外科医のF君が面白いデジカメを持参していた。ロボット・デジカメだ。半径15センチほどの半球形の台にデジカメを載せたもので、これをテーブルの真ん中に置くと、くるくると回転しカメラの角度を上下に変えながら人物を検出して自動撮影する。顔検出機能に加えてスマイルシャッタという笑顔検出機能があり、笑顔をのがさず撮影する。画面にとらえた人物の数に応じて画面構成が調節される。ロボットはカシャカシャと音を立てながら、元気よく撮影しまくっていた。

 数日後、F君から写真をマイクロソフトの無料ストレージサービス、Skydriveに登録したという連絡が来た。「ロボット」が撮影した写真は「全部そのまま」アップされていた。総数420枚(写真1)。「サムネイル表示された写真をサアッと」ながめた。ロボットが知らないうちに撮影しているので、表情もふるまいも自然に写っており、会の楽しい雰囲気がいきいきと伝わってくる。こんな新しいコミュニケーションの形が生まれたのだなあ、と思った。

写真1●ロボット・デジカメで撮影された同窓会の写真<br>自動撮影で、知らないうちに自然な表情の写真が大量に撮影された。
写真1●ロボット・デジカメで撮影された同窓会の写真
自動撮影で、知らないうちに自然な表情の写真が大量に撮影された。
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画像を“浴びるように”活用する

 新しいコミュニケーションの形をなんと呼べばいいか考えた、“Share&Shower”だ。そのキーワードは「ロボット」、「全部そのまま」、「サムネイル表示された写真をサアッと」だ。 Share&Showerコミュニケーションには次のような特徴がある。

  • 人間の作為が入らないロボットによる大量の画像収集(情報が客観的、網羅的に取れる)
  • 伝えたい人だけがアクセスできる入れ物に加工も取捨選択もせず画像を入れてシェア
  • シャワーを浴びるように大量の画像を活用(一枚一枚、サムネイルを開いたりせず、流すように見る)

 Share&Showerはパーティの雰囲気を伝える、といった個人の楽しみを目的とした使い方だけでなくビジネスでも有用だ。 例えば、会議の様子をロボット・カメラで撮影しておいて議事録と一緒にシェアすると、「誰が熱心に議論に参加していたか」「結論に納得顔の人は誰で、不満のありそうな人は誰なのかむといったことが見て取れるだろう。

 デパートの売り場で1日、売り場に来る顧客の表情を追いかけると、「時間帯ごとの顧客数、性別や年齢層」「顧客が手に撮って興味を示している商品」など、売り場計画に役立つ情報が得られる。 

 同じことはビデオでも出来るし、その方が情報量も多いと思われるかも知れない。しかし、ビデオは冗長性(無駄な情報が多い)が高く、読み取るために時間がかかり過ぎるのが欠点だ。デパートの売り場1日分のビデオを早送りでチェックしても何時間もかかるだろう。

 会議で発言した人をとらえて撮影された画像、デパートの売り場で人が来たときだけ検出して撮影された画像の方が無駄な情報が少ない。多くの画像をながめて発言の多い人を特定したり、雰囲気をつかむのも短時間で出来る。筆者が先の同窓会の写真420枚をパソコンの画面でスクロールして見るのに1分もかからなかった。それで十分、会の雰囲気は伝わる。

 デパートの売り場で撮影された画像がたとえ1000枚あったとしても、それをながめる人は4~5分も見れば、どの時間帯に来客が多いか、性別や年齢層はどうか、がつかめるだろう。画像を認識する脳の能力はとても高いようだ。だから、シャワーを浴びるように大量の画像を短時間で理解することが出来る。