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 2010年10月初旬のある日の夕方、筆者は兵庫県のJR尼崎駅前にいた。既に帰宅ラッシュが始まっており、駅は混雑している。すっかり日が落ち、駅に直結するまだ真新しい大型商業施設「COCOE(ココエ)」のネオンサインが明るく輝いて見えた。ここはかつてキリンビールの尼崎工場があった広大な敷地で、再開発で2009年10月にCOCOEに生まれ変わった。

 今回紹介するのは、このCOCOEの3階にある「ぽっちゃりさんの楽園」である。カタログ通販大手のニッセンが初出店した、大きいサイズ専門の婦人服店「スマイルランドあまがさき店」のことだ。

 筆者があまがさき店に向けて駅から歩き出すと、少し先には早速、ぽっちゃりさんの後ろ姿が見えた。彼女が目指す先にスマイルランドがあるであろうことは、何となく想像がついた。

 スマイルランドはLから10Lまでの大きいサイズが豊富にそろう、女性向けセレクトショップである。この店を目がけて、地元尼崎や大阪、神戸のぽっちゃりさんはもちろん、遠くは三重や和歌山、岡山などからもぽっちゃりさんが集まってくる。スマイルランドが開店したことで、尼崎駅前ではぽっちゃりさんを見かける機会が幾分増えたのかもしれない。

 そう言っても言い過ぎではないほど、スマイルランドはこの1年で、ぽっちゃりさんの熱い支持を集めるようになった。

 あまがさき店の立ち上げを指揮したニッセンの岩瀬三欣氏は、「僕自身がぽっちゃりさんの気持ちになって街を歩き回り、彼女たちの不満要因を探し、その不満を解消してあげられる、ぽっちゃりさんにとっての“ディズニーランド”を開発するつもりで店舗を設計した」と話す。スマイルランドはまさに、ぽっちゃりさんが何度でも通いたくなるような楽園なのかもしれない。

 その証拠に、2010年10月で開業1周年を迎えたあまがさき店は、初年度でいきなり黒字を達成した。これにはアパレル業界の関係者が一様に驚いた。通常サイズの女性よりも数が少ないぽっちゃりさんを対象にしながら、もうかる市場が存在することをスマイルランドが実店舗で証明してみせたからである。

 スマイルランドの成功を受けて、婦人服業界は今ちょっとした、ぽっちゃりさんブームに沸いている。大きいサイズの衣料品展開を強化する動きが着実に広がってきている。

 2010年はぽっちゃりさんブームの到来を感じさせた1年だったといえるかもしれない。女性誌はこぞって、ぽっちゃりさん人気を取り上げ、「もてぷよ」「もてぽちゃ」といった言葉を目にする機会も増えた。

 「もはやぽっちゃりさんはマイノリティーではない」とは、岩瀬氏の言葉だ。

大きいという感覚が薄れる不思議な店内

 筆者はあまがさき店を目指しながら、「どれほど大きな服が並んでいるのだろう」とドキドキしながら現地に向かった。あまがさき店はCOCOE内のいわゆる一等地に立つわけではなく、買い物姿を人には見られたくないというぽっちゃりさんにも配慮して、3階の少し奥まったところにある。人気店にしては意外な立地だ。そのあまがさき店にたどり着くと、一瞬、拍子抜けしてしまった。

 一見すると、店構えはどこにでもある、はやりの婦人服店に見えるからである。軒先に並ぶ、一押しのワンピースは秋色のかわいらしいデザインで人目を引く。「これはデッカイな」という強烈なインパクトはそれほど伝わってこないし、デザインはスマイルランドの真向かいにある巨大なユニクロに負けていない。「大きいサイズはダサい」という印象も受けない。それもそのはず、店頭を飾る服はニッセンが人気のアパレルメーカーから仕入れたおしゃれな服だからである。

写真1●大きいサイズの衣料品が並ぶ店内
写真1●大きいサイズの衣料品が並ぶ店内
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 通常の店舗との違いは、ハンガーにつるされたワンピースに近寄ってみて初めて分かった。3Lや5Lといった、筆者には見慣れない大きいサイズの表示が目に飛び込んできたからだ(写真1)。

 不思議なもので、スマイルランドで扱っている商品はすべてが大きいので、店の前に立った段階では大きさの感覚がよく分からなくなるようだ。しかし、店の目の前にあるユニクロの服とスマイルランドの服を並べて見比べることができたなら、その大きさが明らかに異なることをはっきりと確認できるのだろう。

 スマイルランドの場合、服だけでなく、さりげなく置かれているアクセサリーやかばん、靴などのファッションアイテムもすべて、ぽっちゃりさん仕様の大きいサイズになっている。ショルダーバッグは肩ひもが長く、ネックレスは長め、靴は横幅が広めだ。大きいサイズの服とともに、ぽっちゃりさんがトータルコーディネートを楽しめる品ぞろえになっている。当然、商品を陳列する什器類も大きい。