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 NTTドコモが2010年内にも「LTE(Long Term Evolution)」規格の通信サービス「Xi」をスタートする。屋外で下り最大37.5Mビット/秒、一部屋内では75Mビット/秒という高速さが話題になり、ITproでも特集記事「5つのポイントで知るLTEの実像」などで、LTEの特徴を様々な側面から紹介している。ここでは、ITproの特集であまり触れられていない、LTEの後継規格について紹介したい。

 国内ではLTEのサービスが立ち上がり始めた時期だが、標準化の世界ではさらにその先の規格が固まりつつある。LTEの“その次”は「LTE-Advanced」と呼ばれ、基本的な仕様は国際的な標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)で「Release 10」以降として規格化が進められている(ちなみにLTEの初期仕様は「Release 8」という位置づけ)。その名が示すように、LTE-AdvancedはLTEを強化したもので、静止時で下り最大1Gビット/秒、高速移動時で最大100Mビット/秒を目指すという。

3Gと比べ技術的にジャンプしたLTE、さらに改良したLTE-Advanced

 LTE-Advancedの説明をわかりやすくするため、まずはその基盤となるLTEの特徴について簡単に触れておこう。現在広く使われている3G(第3世代携帯電話)の「W-CDMA」と比べ、LTEではネットワークの基本技術がかなり変わる。

 具体的には、(1)利用する周波数帯域を増やし20MHz幅まで柔軟に変更可能、(2)変調方式として64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)を追加、(3)マルチアンテナ技術MIMO(Multiple Input Multiple Output)の採用、(4)多元接続方式OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)の採用――などだ。また、データ通信と音声通信をまとめてIPネットワークで処理できるようにしているなどの特徴がある。

 一方、LTE-AdvancedはLTEと技術基盤に共通する部分が多い。違いは、次世代規格4G(第4世代携帯電話)の条件として挙げられている高速性などを実現する機能が追加されていることだ。LTE-Advancedで強化された機能には(1)キャリアアグリゲーション、(2)8×8MIMO、(3)CoMP(Coordinated Multi-Point)、(4)リレー技術、(5)多元接続方式の拡張――などが含まれる。

 キャリアアグリゲーションは複数のキャリアを束ねて高速化する技術だ。20MHz幅のキャリアを複数束ねて、下り最大100MHz幅、上りは40M~60MHz幅までのキャリアを使う。帯域を拡大することで高速化を目指す仕組みだ。8×8MIMOは、LTEにも規定されている4×4MIMOを強化してアンテナの数を増やし、伝送路も拡張する。CoMPは複数の基地局が協調して、同時にユーザーの端末にデータを送信する機能である。これは現在のLTEの仕様にICIC(Inter-Cell Interference Coordination)として盛り込まれている機能を発展させたものだ。

 リレー技術は、端末と基地局の間にリレー局を設置して、無線通信を中継する仕組み。基地局のセル(携帯電話などの無線通信システムで、一つの基地局がカバーする範囲)の端のほうで通信速度が低下するのを防ぐ狙いがある。多元接続方式にもLTEの技術を踏まえつつ、複数のキャリアの利用を前提にするなど様々な強化がなされているようだ。こうしてざっと見た感じでも、LTEから引き継いで強化した技術が結構あることがわかる。

「3.9G」という中途半端な世代のLTE

 4GはもともとITU(国際電気通信連合)が定めた国際標準「IMT-Advanced」での採用を目指す通信規格を指しており、LTE-Advancedはその一つである。2010年10月21日には、ITUの無線部門ITU-Rが、「LTE-Advancedが第4世代移動通信(4G)に合致している」との判断を示した。

 一方、LTEは日本で「3.9G」と呼ばれていることからわかるように、3GのW-CDMAと次世代の4Gの間に位置し、「限りなく4Gに近い、でも世代としては3Gに属する」という位置づけだった。ITUが国際標準として定めた「IMT-2000」に準拠する通信規格や、それを採用した携帯電話が3Gと呼ばれている。

 ところが、欧米を中心にLTEも4Gと呼んでしまうケースが増えてきている。世界で初めてLTEの商用サービスを開始した北欧の通信事業者テリアソネラでは、LTEを4Gとして紹介している。米国で初めてLTEサービスを始めたメトロPCSコミュニケーションズのニュースリリースも同様だ。

 以前から取材先で機会があると「LTEを4Gと呼んでしまう理由」を聞いてきたのだが、これには大きく二つの背景がありそうだ。一つは小数点を含む数字を使った世代(G)の呼称は日本では一般的だが、世界的にはそうではないこと。次に、マーケティング的に次世代の4Gと呼んだ方がウケが良いことである。もう一つ、上記で紹介したようなLTEとLTE-Advancedの技術的特徴を挙げ、基本的な技術の面ではLTEの段階ですでに次世代に足を踏み入れているためだ、という人もいた。

 記者はこれまで「まあマーケティングのためだろうな」と思ってきたのだが、最近になって『日経NETWORK』2010年11月号の特集「LTEって何だろう?」の執筆に当たり、3GPPやNTTドコモがまとめたLTE-Advancedの資料をじっくり眺めた結果、個人的には3番目の理由が特に腑に落ちた気がしている。

 さて、このLTE-Advanced、実現はかなり先の話になる見通しである。端末メーカーに聞いたところ、8本のアンテナを使ったMIMOを端末に実装する際のスペース、消費電力の削減など様々な課題がある。開発にはまだ時間がかかり、実用化は早くても2010年代の半ば以降になりそうだ。