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 筆者が若かりし頃、当時の上司から「ようやく仕事のやり方がわかってきたようだな」と言われて嬉しかった記憶があります。

 あれから20数年経ち、上司の立場になった現在の筆者には、自分流の仕事のやり方というか、こだわりがあります。そして、このこだわりに合っている部下を「君、仕事できるね」とほめ、はずれている部下を「君、わかってないね」と叱っています。上司なんて、そんなものです。

 参考までに、筆者のこだわりをQ&A形式で紹介しますので、皆さんのこだわりと比べてみてください。

Q1.初対面の相手と何を話しますか?

A1.新しい仕事は、初対面の相手と話をすることから始まります。そのとき、お互いの仕事の接点を見つけるための話をします。

 テーマは、2つあります。一つは「私は、この人のために何ができるか」です。もう一つは「この人は、私のために何ができるか」です。30分~1時間ほど話をして、すぐに接点が見つからなかったら、接点を見つけることを宿題にします。宿題ができなかったら、縁がなかったのだとキッパリ諦めます。

 とりあえず雑談をする、とりあえず飲食を共にする、というのは時間の無駄のように思えます。そういうことは、お互いの接点が見つかってからやりましょう。

Q2.提案で心がけていることは何ですか?

A2.お互いの接点が見つかったなら、仕事が一歩前進し、相手の要求に対する提案をすることになります。

 提案で心がけているのは、速さと数です。相手の要求を聞いたら、最速その場で一つ、遅くても次の日までに3つぐらいの提案を示すようにしましょう。たっぷり1週間かけてBランクの提案を一つだけ示すより、すぐにCランクの提案を複数示した方が、仕事が円滑に進むからです。短くて概要だけの提案であっても、「たたき台です」と断れば、決して失礼ではありません。この劇速の提案は、まるきり的はずれな場合もありますが、それが早期に分かるのですから、すぐに修正案を示せます。もしも、1週間かけて示した提案が的外れだったら、相手はがっかりするでしょう。

 「よく考えますので少々お時間をください」という人を見かけますが、いい大人なのですから、すぐに思い付かないことは、きっと1週間かけても思い付かないでしょう。

Q3.見積もり金額を負けてくれと言われたらどうしますか?

A3.例え小額であっても、安易に負けることはしません。

 なぜなら「負けてくれ」と言われて、すぐに下げられる見積もり金額は、インチキだからです。最初に提示した金額がインチキなら、相手を騙そうとしたのです。これでは、仕事を受ける資格などないでしょう。業種や地域によっては、見積もり金額を下げるのが慣例となっていることがあります。そのような場合には、下げることを想定していない金額であることを相手に伝えます。

 企業によっては、購買を別会社に任せていて、その別会社が10%の管理費を要求することがあります。つまり、見積もり金額を10%下げて、その10%をよこせというわけです。このような場合には、あらかじめ管理費10%を上乗せした見積もり金額を提示します。

 お金のことは、きちんとしなければいけません。

Q4.お客様との待ち合わせには、何分前に行きますか?

A4. 15分前までを必着とし、そのために30分前に到着するスケジュールで移動します。

 お客様を待たせるのは、とても失礼なことだからです。万一、お客様が自分より早く到着していた場合は、例え待ち合わせ時間の前であっても「お待たせして申し訳ありません」と頭を下げて謝ります。

 これは、仕事の納期でも同様です。納期ギリギリでなく、3日前~1週間前に納品できるスケジュールを立てます。お客様は、納品を待っています。待つのは、不安なことです。この不安を早く解消してあげると、とても喜んでくれます。

Q5.ITエンジニアがお客様に提供するものは何ですか?

A5.IT業界の仕事を「ITソリューションビジネス」と呼んだ時代がありました。「ITエンジニアがお客様に提供するのは、技術ではなく、ソリューションだ」「我々ITエンジニアの仕事は、お客様が情報活用に関して抱えている問題を解決することだ」と言われていたのです。

 筆者も、その通りだと思っていましたが、やがて、もっと重要な言葉に出会いました。「CS(customer satisfaction=顧客満足)」です。

 IT業界は、特殊なビジネスではありません。そもそも、世の中のどんな業界であっても、顧客に提供するものは顧客満足であるはずです。技術が重要でないと言っているのではありません。技術が土台となってソリューションがあり、ソリューションの上に顧客満足があるのです。

Q6.ヘッドハンティングされたらどうしますか?

A6.「当社には、あなたが必要です」と口説かれるのは、とても気分がよいことです。ただし、自分の実力に見合っている誘いなら乗ってOKですが、そうでない場合は断りましょう。

 なぜなら、転職先で自分が役に立たなかったら、せっかく誘ってくれた相手に申し訳ないからです。ヘッドハンティングされたら、冷静になって自分のことを評価して、決して無理な冒険をしないことです。

 これは、仕事を広げるときも同様です。10人のチームで数千万円レベルのシステムの経験しかないなら、100人のチームで数億円レベルのシステムを引き受けるべきではありません。身の丈に合わない仕事をするのは、依頼者に対して失礼です。

Q7.何をもって仕事が成功したと判断しますか?

A7.ITエンジニアとして、顧客満足を提供できれば成功です。しかし、アンケート用紙を渡して満足度調査を実施するわけにもいかないでしょう。満足していても、あれこれ注文を付けてくるお客様もいます。お世辞で、高評価を付けてくれるお客様もいます。

 アンケートなどをしなくても、お客様が満足しているかどうかは、リピート案件をいただけるかどうかで判断できます。当然のことですが、満足しているからこそ、次の案件もリピートして依頼してくださるのです。

 すぐに次の案件がないなら、別のお客様を紹介してくれるように頼んでみてください。快く紹介してくれたなら、そのお客様は十分に満足しています。もしも「こんなにいい仕事をしてくれる人を、ライバル会社に紹介するわけにはいかないよ」と言われたら、お客様の満足度は、かなり高いはずです。

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 「ぼちぼち還暦なのだから、後の世代に何か言い残しておこう」という趣旨で始めた連載も、今回で最終回です。これまで連載をお読みいただいた皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。また、新たな企画でお目にかかれる日を楽しみにしております。それまで、どうぞお元気で!