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 「タダより高いものはない」と言う。我々の社会は財物やサービス提供されたら、おカネを対価として支払うのが当たり前だ。見ず知らずの人がタダで何かをくれる場合には、何か裏があるから気を付けなければならない。少なくとも記者は、子供の頃からそう教わってきた。

 一方で現在のインターネットで当たり前なのは、無料で使えるサービスの方だ。メールも写真共有もデータ保存も文書作成もニュースも、直接カネを支払わずに使える。うさんくさいものや慈善事業ではなく、ちゃんとした「ビジネス」として提供しているものが大半だ。

 無料を基本としたビジネスモデルの代表格が「フリーミアム」だ。基本的な機能やサービスを無料で提供し、より高い機能やスペックを求めるユーザー向けに有償版を用意するというものである。無料版の利用者を拡大し、そのうち数%を有料版へ移行させることで採算を取る。フリーミアムというビジネスモデルは、話題になった書籍「フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」で、日本でもより広く知られるようになった。

オープンソースソフトや無料体験版とは違う

 このフリーミアムが、企業情報システムの分野にも広がり始めている。一般消費者向けサービスで普及したフリーミアムを企業向けサービスに適用し、従来の有償サービスにはないスピードと効率の情報化を実現する。こんなクラウドサービスが、増え始めているのだ。

 企業におけるクラウドサービスの新たな選択肢であるフリーミアムを、日経コンピュータは2月3日号で特集した。現在、日本で利用できる主要なフリーミアムサービスについて、その実力を検証するとともに、利用企業の声などに基づいて使いこなしの注意点をまとめた。

 無料というだけなら、これまでもオープンソースソフト(OSS)や無料体験版などがあった。フリーミアムの違いは、まず利用期間に制限がないことだ。利用期限を設けることが多い無料体験版と異なり、フリーミアムに基づくサービスは無料のまま使い続けることができる。利用者を増やすことが前提のフリーミアムは、無料でも問題なく使えるサービスを提供しなければ、ビジネスモデルが成り立たないからである。

 もう一つの違いは運営や利用者サポートである。フリーミアムは商用ソフト/サービスと同様に、サービスの提供元が運営や利用者サポートに責任を持つ。フリーミアムは無料とはいえ“商用”のサービスだからだ。OSSを使う場合は、専門ベンダーにサポートを依頼するにしても、基本的に自己責任となる。

クラウドの成熟を実感

 特集の取材を通して実感したのは、企業向けクラウドサービスの市場が確実に成熟しつつあるということだ。様々な種類のサービスが新たに登場し、機能や使い勝手とコストパフォーマンスを競い合っていた時期が一段落。主要なサービスは、どれも一定水準の機能や品質に達し始めた。となると、他社との差異化要因は自ずと料金水準に向き始める。そこで一歩抜け出すために、無料を基本とするフリーミアムが増え始めた、というわけだ。

 「顧客企業にとってフリーミアムのサービスは、競争優位を確保する手段というよりも、“競争劣位”を防止する手段と捉えるべきだ」。同分野に詳しい、戦略系コンサルティング会社ローランド・ベルガーの大野隆司パートナーは、こう指摘する。競争劣位とは、他社との競争に後れを取ってしまう状態のことだ。