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 NTT(持ち株会社)がグループを挙げて、教育分野におけるICTの利活用促進のための実証実験「教育スクウェア×ICT」を、2011年度第1四半期から最長3年間の予定で実施する。全国4自治体の公立小学校8校(280人程度)を対象に開始し、将来的に中学校を含めた最大10校(500人程度)まで規模を拡大する予定である(発表資料)。

 こうした実証実験では、学校に整備するインフラや生徒が使う端末に注目が集まりがちだ。しかし筆者は、今回の実験で要となるのはNTTグループが提供する「教育クラウド」にあると考える。この部分の使い勝手や機能が不十分な場合、せっかく整備したインフラや端末も十分に活用されないためだ。NTTグループの教育クラウドでは、デジタル教科書やデジタル副教材、デジタル教材ライブラリなどのコンテンツ提供機能のほかに、教師や生徒向けの連絡事項を掲載する「学校ポータル」、教師向けの「授業シナリオ作成ツール」、教務/学籍/保健関係の事務作業を効率化する「校務システム」、ラーニングマネジメントシステム(LMS)などの機能を提供する(図1)。教育クラウドが持つ様々な機能のうち、ここでは主にICTを使った授業支援を中心に話を進めたい。

図1●NTTグループが提供する教育クラウドの活用イメージ(NTTの発表資料より)
図1●NTTグループが提供する教育クラウドの活用イメージ(NTTの発表資料より)

デジタル教材の使いにくさ

 教育クラウドで大きな位置づけを占めるデジタル教材については、そもそも導入すること自体に懐疑的な人たちもいる。そうした人たちが指摘するように、現状のデジタル教材に使いにくい点が多々あるのは事実だろう。例えば、教育分野に携わる研究者に聞くと、日本の教育現場ではカリキュラムの範囲内であれば、教師が各自の方針で授業を行うことが望ましいとされており、教材は各教師がカスタマイズして使うものなのだという。そうした観点から見ると、コピーを切り貼りして直感的にオリジナルのプリントを作れるアナログ教材に対して、パソコンやソフトウエアに対する知識がないと編集作業ができないデジタル教材は使いづらいものに映るという。

 デジタル教材の使いにくさについては、次のような例もある。教育情報ナショナルセンター(NICER)が、インターネット上にある様々な学習コンテンツの情報を整理する取り組みを行っている(※2011年度は運用停止の予定)。登録済みのコンテンツは約21万件、動画だけでも約3400件あるといい、教育目的であれば大半のコンテンツが無料で利用できる。登録コンテンツはキーワード検索が可能なほか、科目や単元など様々な属性情報を使って探し出せるようになっており、利便性は高い。にもかかわらず意見を聞いた複数の教育関係者が、NICERの存在は知っていても実際にコンテンツを授業で活用する機会は少ないと答えた。その理由として、NICERの登録コンテンツは、コンテンツごとに提供者が異なるためにファイル形式などの提供形態がバラバラで、パソコンに慣れない利用者にはカスタマイズが難しいことを挙げた。デジタル教材を効果的に活用した授業を増やすには、良い教材がそろっているというだけでは駄目で、教材を授業で利用する際の教師の負担が小さくなるような工夫も併せて必要なのだ。