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 危機に直面した時、重要な事は、できる限りの対応と何らかの学びである。東日本巨大地震の危機は続いているが、3月16日夕方の段階で筆者なりにまとめた10の論点を報告する。

 10件の大半は、知り合いが電子メールや意見交換サイトを使って送ってきた意見に基づく。知り合いと書いたが正しくは、常日頃から意見を伺っている方々で、経営や技術の実務経験が豊富な論客ばかりである。

 以下に論点を列挙する意図は、日本の再設計のために検討すべき事柄を読者の方々に共有頂くことにある。危機の最中であり、記述は極力短くした。

 論客陣は、プロジェクトやリスクのマネジメントあるいは情報システムのプロフェッショナルであり、地震対策や原子力発電の専門家ではない。このため一見すると計画停電への言及が目立つかもしれないが、彼らの指摘は、日本・マネジメント・技術にかかわる本質を突いている。地震問題にとどまらず、読者の皆様がかかわっている問題のチェックリストとして眺めてほしい。

■マネジメントに関する論点

【判断】顧客のために秩序や組織の枠組みを超える

 マネジメントとは、人や組織を適切に動かし、より良い成果を出すことである。「電気が足りなくなる、だから止めます」という判断は、「電気のことは東京電力(以下、東電)が決める」という“秩序”の中で下された。停電が「電気の顧客」に与える影響を考慮するなら、交通機関に計画運休を要請する、電力消費量を公開し企業に節電を呼びかける、あるいは一斉休業する、といった「東電を超える」対応が望まれた。3月15日、経済同友会は「計画停電ではなく電力の総量規制を」という緊急提言を出した。

【実行】判断、計画立案、指示、説明を少数精鋭で担う

 既存の秩序を超えて国民に資する判断を下し、それを実行する体制を作らなければならない。電力供給を例にとれば、交通機関などに節電あるいは運休を要請するには、関係者の合意をとりつけ、実行計画を素早く立てる必要がある。火事場を乗り切るためには、技術と仕組みが分かる人を含む少数精鋭の、しかも実務的な危機対応チームが望ましい。国の危機の場合、そのチームは国の管轄下に入る。肩書きを持つ人の役目はチームメンバーを信じて任せることである。

 【判断】と【実行】の内容は、すべての企業や組織にかかわる。被災地が求めている事の一つは物資の供給である。小売業各社は今、物流各社と連携し、被災地を含む各地で店を開いて商品を届けようと緊急対応の真っ最中である。それには受発注や店舗配送の仕組みを熟知したチームが商品をやりくりする術を考えて実行していかなければならない。

【広報】顧客が理解できる情報発信

 政府や東電の情報開示や説明に関する批判はすでにマスメディア各社が繰り返しているので割愛する。不特定多数の顧客に重要事を同報する。技術やシステムにかかわる情報を分かりやすく正確に発信する。これら2点の工夫もまた多くの企業に関係する。工夫のカギは協業と思われる。ヤフーなどポータルサイトの停電情報は東電のそれよりはるかに分かりやすいし、ホンダがグーグルにカーナビ情報を提供している自動車・通行実績情報マップ関連記事)のような例もある。

【報道】事実を系統立てて冷静に伝える

 政府や東電を批判するマスメディアの報道が分かりやすいのかと言えば疑問である。報道の問題はマネジメントとは別の論点だが、広報と対になるのでここに入れておく。筆者に対し、ある論客は「非常時には情報を系統立てて集め、“面”にしていくことが望まれる。だがマスメディアは同じ“点”を繰り返し報じるだけで、“線”を引こうという姿勢すら無い。自分達の役割を何だと思っているのか」と書いてこられた。被災情報の提供と技術解説の両方について反省と検証が必要と思う。自戒として書いた。