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 2011年3月11日の東日本大震災発生から約2カ月。その間に大幅に認知度が上がった防災システムの一つが、携帯電話に搭載された「緊急地震速報受信機能」である。各通信事業者が指定する対応機種を持っていれば、予想最大震度が5弱以上の地震を観測した場合に気象庁が発表する「一般向け速報」を受信できる。

 配信回数は、3月の1カ月間だけで45回に上った。2009年の配信回数は年間で3回、2010年も年間5回にすぎなかったことを考えると、いかに異常な事態かということが分かる。

 このように、3.11以前にはあまり接する機会が少なかった通知なだけにユーザーからすると受信の仕組みや、設定可能な項目など、不明な部分も多い。日経コミュニケーション編集部が4月中旬に実施した、読者モニターへの意識調査にも、そうした様子が見て取れた(集計結果をまとめた記事は本誌6月1日発行号に掲載予定)。

 例えば、一例を挙げると「受信対応端末が増えるのは良いことだが、普及しすぎると通話やメールのように緊急時に遅延が起きてしまうのではないか」といった誤解があった。実際には携帯電話向けの緊急地震速報は、配信対象の端末が増えても、受信タイミングのばらつきや遅延が起こらない仕組みで運用されている。

 NTTドコモとソフトバンクモバイルはCBS(セルブロードキャスト)、auはBroadcastSMSという仕組みを使い、基地局側から1方向の情報通知で対象端末すべてに強制的に受信させる「一斉同報通知機能」で配信する。このとき、速報の中身のデータは、通常の通話やデータ通信とは違うチャネル経由でを配信している。このため通話のふくそうやパケットの集中による遅延が起こっているときでも、その影響を受けずに受信できるわけだ。調査結果を見ると、こうした基本的な認識違いのほかにも、素朴な疑問も寄せられた。以下で、二つほど紹介したい。

隣の人の携帯は鳴ったのに自分のは鳴らなかった?

 いくつか散見されたのは、「隣の携帯電話は受信したのに自分の端末は受信しなかった」という感想だ。確かに通話中やメール受信などのデータ通信をしている場合は、緊急地震速報は受信できないということを、各社も周知している。

 これは端末宛てに受信すべき情報があるかどうかを通知するチャネルを、通話や通信と共用しているためだ。速報データの配信そのものは、別のチャネルを使うので影響されないのだが、端末が受信すべき情報があることに気が付くかどうかは、他の通信に影響されてしまう。こうした場合は、たとえ同じ配信対象エリアの隣り合った携帯電話同士でも、通信中の端末が受信できないことは起こり得る。

 またNTTドコモによれば、そうしたケース以外にも速報を受信できない場合がまれにあるという。携帯電話は机の上の置き方など、アンテナの向きが多少違うだけで、電波の受信感度が変化する。このときの状態によって、一斉同報通知が始まったという通知が受け取れる場合と受け取れない場合があるのだ。通話やメールの場合は、受信感度が悪くても数秒間はその端末が応答するまで基地局からリトライがかかる。

 ところが、一斉同報配信の仕組みでは、最初の受信のきっかけになる通知は一度送られたきりで、再送はされない。そのため着信やメールの受信に比べて、受信ロスが起こる確率は上がるという。

 通知を再送しない理由は、「端末によって受信のタイミングに何秒もの差が出てしまっては緊急速報の意味が薄れてしまう」(NTTドコモ)と判断しているから。あるタイミングで配信された速報は、その時に受信できなかったら、後から届くことはない。