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 「情報システム部という組織はもっともっと会社や社会に貢献できる。部長を9年間務めて得た結論です。ところが世間を見渡してみると残念ながら、情報システム部の地位というものはなかなか上がらない。そうじゃないぞ、と何とかして訴えたい。情報システム部から離れる今、そう思っています」。

 ある製薬メーカーの情報システム部長はこう語った。この発言をした時、彼は9年間在籍した情報システム部を離れ、別な部の責任者になる内示を受けていた。彼はもともと、研究開発、営業、経営企画といった各部門を経て、情報システム部を担当した。部長として着任するまで、情報システムの仕事に関わったことは無かった。

 情報システム部長を命じた社長は、「ITにガバナンスがかかっていない。予算や実績が外からはっきり分かるように透明化してほしい」とこの部長に指示したという。

 情報システム部がブラックボックスになっていることが気になった経営者が、情報システム部の経験がないマネジャーを情報システム部長に据える。こうした人事は珍しくはないが、この部長のように何でもやってみた人は珍しい。

部長の初仕事は外部人脈作り

 この部長が着任して最初に始めたのは、情報システム部員の面談と並行して、外部の人脈を作ることであった。IT関係の講演会に足を運ぶ。付き合いのあったコンピュータメーカーのユーザー会に参加し、出席している情報システム部長や課長らと話をする。情報システムやSEに関する本を買って読む。

 講演を聴いたり、話をしたり、本を読んだりした結果、これはと思ったCIOや情報システム部長、著者には自分で連絡して会いに行き、情報システム部のマネジメントについて相談した。

 実は筆者にこの部長を紹介してくれたのは、『SEを極める』(電子版はこちら)の著者でITproに連載をしている馬場史郎氏であった。「頑張っている情報システム部長がおられるので一度会いませんか」と言われたのだが、なかなか会えず、お目にかかった時は情報システム部を離れることが決まった後であった。なかなか会えなかったのは、筆者の怠慢のせいである。

 馬場氏とこの部長の出会いも、部長からの働きかけであった。「SEの育成について勉強したい」と知り合いのコンピュータメーカー出身者に相談したところ、馬場氏を紹介されたという。

 外部人脈を作り、情報システムに関する土地勘を磨く一方、情報システム部員とも話をし、情報システム部のビジョンと中期計画を作った。

プロジェクトで人を鍛える

 次にプロジェクトを企画し、実行に移した。情報システム部長就任とほぼ同時に同社の社長が交代しており、新社長が「お客様の声をきちんと集約できているのか」と発言したのを聞くと、すぐに顧客の問い合わせに応えるセンターの設立を提案した。それに関連して製品情報を管理するシステムを作り直し、続いて情報セキュリティポリシーを作るプロジェクトを始め、社長に依頼して情報セキュリティが大事であることを社内に宣言してもらった。

 社長が関心を持つプロジェクトを進めて、情報システム部に関心をもってもらおうとしたわけだ。もともと経営企画にいたため、経営陣とは話ができた。続いて長年の懸案であった基幹システムの全面再構築に手を付け、経営陣から投資の承諾を得た。

 基幹システムの再構築は必要に迫られていたこともあったが、この部長は部員の力をさらに引き上げるという狙いも込めていた。その力とは、業務を理解し改革する力とマネジメント力である。着任して部員と面談し、「業務部門とビジネスの話をするコミュニケーション力が課題と感じた」からであった。