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写真1●300mmのウエハーを扱う生産ラインがある「N3棟」の正面玄関に掲げられた6月生産再開を祝う垂れ幕(写真撮影:菊池 斉)

 自動車や電子機器に搭載するマイコンで3割のシェアを握る最大手のルネサスエレクトロニクス。2011年7月4日、東日本大震災で被災した那珂工場(茨城県ひたちなか市)を訪れた。正門を入って2~3分歩くと、左手に直径300mmのシリコンウエハーを扱う生産ラインがある「N3棟」が見えてくる。その正面玄関を入ってすぐに私の目に飛び込んできたのは、垂れ幕に書かれた「一致団結 加速へ向けてフル生産再開!」の文字だった(写真1)。

 マイコンやシステムLSI(大規模集積回路)を生産する那珂工場は、ルネサスの生産能力全体の15%を担う主力拠点。東日本大震災で操業を停止し、当初は9月の生産再開を見込んでいたが、予定を前倒しして6月から順次生産を始めている。垂れ幕の文字は、この前倒しの生産再開を祝ってのものだった。

最大2500人/日が支援

 生産再開の前倒しに寄与したのが他社からの支援だ。3月下旬から、顧客も含め自動車や電機、プラントメーカーなどから続々と支援部隊が到着。その数は最大で1日当たり2500人超に達した。まさに「オールジャパン」といえる陣容だった。那珂工場で働く約2000人と合わせると、最大で5000人弱が昼夜を分かたずに作業を進めていたことになる。

 修復手順はこうだ。まずルネサスの生産技術のメンバーが中心になって、生産設備の損傷度合いをA~Dの4段階に分類。Aは通電すれば早期修復が可能、Bは部品を少数入れ替えれば修復可能、Cは部品を大部分入れ替えれば修復可能、Dは修復できない可能性が高い、というもの。分類は物理的な損傷の度合いから推定した。

 その後に主力の6製品を選び、早期修復が可能な設備を引き当てて、製造プロセスを設計した。これら6製品の生産を再開できれば「(ウエハー上に回路パターンを転写するために使う)マスクを変えるだけで品種展開はいくらでもできる」(生産本部プロセス技術統括部の児島雅之副統括部長)という判断があった。

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写真2●青柳隆那珂工場工場長(写真撮影:菊池 斉)

 これだけの人数で作業を進めるうえでは「情報共有が一番の鍵になることは明らかだった」と青柳隆那珂工場工場長(写真2)は振り返る。「これがうまくいかないと、『人はいるけどちっとも作業が進まない』ということになりかねない」。そうした事態に陥らないよう、青柳工場長は朝夕の2回、タスクフォースの担当者などを集めて、日々の進捗と作業のボトルネックになり得る事象を共有する仕組みを整備した。

 当初設定したタスクフォースは、電力、給排水設備、排気ダクト、装置の位置ズレを修正する「芯出し」などの7つだった。タスクフォースは時間を経るごとにどんどん変わり、およそ1~2週間のサイクルで入れ替わっていった。