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 2011年7月25日の午後、筆者は東京大学の駒場キャンパスにいた。真夏の太陽が照りつけるなか向かった先は、夏休みで静まり返った構内にあるオープンカフェである。この場所で、その日の主役2人を引き合わせることになっていた。日経情報ストラテジーの2011年10月号特集1「仕事の“渋滞”を解消せよ!」の企画として、特別対談を用意していたからだ。

 2人とは、東京大学先端科学技術研究センター数理創発システム分野大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻(兼任)で総長補佐の西成活裕教授と、ヨガにヒントを得た新しい片付け術「断捨離(だんしゃり)」を提唱する、クラター(がらくた)コンサルタントのやましたひでこ氏である。ともにここ1~2年、テレビや雑誌に何度も登場した「時の人」である。

 街の書店には、今も2人の本が何種類も積まれている。西成教授は渋滞研究の成果をまとめた著書『渋滞学』(新潮社)で有名になり、最近は専門の数学や物理学を応用した仕事の効率的な進め方などの指南書を出して人気になっている。

 一方のやました氏は著書『新・片づけ術 断捨離』(マガジンハウス)で一躍有名になり、全国各地で開かれているセミナーは女性を中心に今も好評だ。2011年5月には続・断捨離と題して『俯瞰力』(同)という新著を出したところだ。

 予定時刻よりも早く現地に到着していたやました氏と筆者は談笑しながら、多忙な西成教授の到着を待った。そもそも今回の待ち合わせ場所が東大の駒場キャンパスになったのは、西成教授に何とか対談の時間を確保してもらうためだった。「東大に行くなんてめったにないことなので、喜んで行きます」と、やました氏はむしろ、東大での対談開催を喜んでくれていた。

 午後3時、西成教授がカフェに姿を現した。2人が顔を合わせるのは初めてのことだったが、お互いに「テレビや雑誌でお見かけしたことがあるので、初めてお会いするという気がしませんね」と言い合っていた。

 さて、対談のテーマは「詰まりを無くすにはどうすればよいか」である。やました氏も西成教授ものっけからエンジン全開で話し始めた。

断捨離と渋滞学には共通点が多い

 実は筆者は2010年秋に、2人に個別に取材している。日経情報ストラテジーの2011年2月号特集1「頭の中の無駄をそぎ落とせ」で、やました氏と西成教授にそれぞれ話を聞いたからだ。この時のインタビューで筆者は、やました氏が提唱し、2010年の流行語にもなった断捨離と、西成教授の説く渋滞学には多くの共通点があることに気づいた。

 ヨガの発想を片付けに応用した断捨離と、数学や物理学を世の現実の課題解決に当てはめた渋滞学には一見、何のつながりも無いように思える。だが2人に話を聞いてみると、どちらも「詰まりを無くしたい」「流れをよくしたい」ということが事の出発点になっていた。

 筆者は2人の取材を通じ、「断捨離と渋滞学は本質的には同じ問題を解決しようとしていて、突き詰めていくと同じところに行き着くのではないか」と考えるようになった。だったら、2人を引き合わせて、対談で確認してみようじゃないかと考えた。それが今回の対談の始まりである。

 結果的に、筆者の仮説は正しかったと言っていいだろう。その証拠に、2人の対談は初対面同士とは思えない盛り上がりとなり、1時間半があっという間に過ぎた。途中、それこそ話題に詰まって対談が“渋滞”することはなく、途切れなく話が続いた。

 筆者は過去に何度か、様々な対談の場に居合わせてきたが、立場の異なる、しかも初対面の2人の話がここまでうまくかみ合ったのは、むしろ珍しいことだと感じた。どちらか一方が話し続けるわけでもなく、終始やました氏と西成教授の意見交換が続いた。

 やました氏も西成教授も、今回の対談で大いに刺激を受けたようだ。後日2人のブログには「対談をアレンジして下さった編集者さん、なんらかの共通点を見出して、引き合わせてくれた訳で。ありましたね、うん、うん、たしかに。いえいえ、ありましたどころか、共通点満載!ご縁とは、出逢いとは、どんな風に、転がっているのかわからないものです」(やました氏)、「(やましたさんは)とっても聡明な方で、話題も次から次に出てきて、時間があっという間に過ぎていきました。知的エネルギー溢れる方はとても素敵ですし、私も刺激を受けました。断捨離の考え方は渋滞学や無駄学ととても通じるところがあります」(西成教授)と書き込まれていた。