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 企業システムを担当するITエンジニアにとって、今ほどクライアント環境の選択に悩まされる時代はないだろう。大きく三つの課題が同時に迫ってきているためだ。

 一つめの課題は、「多様な端末を使いたい」という、利用部門や経営層からのニーズである。これまで、企業のクライアント端末といえば、ほぼWindows PC一色だった。しかし、今ではスマートフォンやタブレットなど、業務で使える端末が増えた。主にコンシューマー市場向けに作られた製品の使い勝手の良さを知った利用部門などが、業務での利用を望んでいるのだ。

 二つめの課題も、利用部門や経営層からのニーズである。「どこからでも社内システムにアクセス可能にしてほしい」というものだ。一つめの「多様な端末」のニーズとあいまって、システム全体の利便性向上を求める要望である。さらに今年3月の震災後は、BCP(事業継続計画)強化の一環としても求められている。

 三つめは「Windows XPのサポート切れ」である。企業向けのクライアントOSとして、いまだに大きなシェアを占めているXPのサポートが、2014年4月に切れる。今後2年半の間に、多くの企業がバージョンアップ作業を実施しなければならない。

 つまり、今の企業のITエンジニアは、「XPのバージョンアップ」を進めながら、「どこからでも」「どの端末からでも」社内システムにアクセスできるような環境を整えなければならないのである。中期的なクライアント戦略の立案が求められていると言い換えることができる。

三つの施策を進めよう

 クライアント戦略といっても、何を決めればよいのかすぐには分からないかもしれない。筆者が専門家や先進ユーザー企業に取材したところ、以下の三つの施策を、どのような時期までに、どれだけのコストをかけて、実施するか(あるいは実施しないか)を決めていくことであるといえる。三つの施策は「スマートフォン/タブレット端末の導入」「クライアント仮想化の推進」「Windows 7へのバージョンアップ」である。

 スマートフォン/タブレット端末の導入は、「端末の多様化」と「どこからでもアクセス」のニーズに応える。クライアント仮想化は、仮想化技術を使ってクライアント環境(クライアントOSやクライアントアプリケーション)をハード非依存にすること。クライアント仮想化を実施することで、「端末の多様化」「どこからでもアクセス」「バージョンアップ」の課題に対処しやすくなる。実装方式として、サーバー上の仮想マシンにクライアント環境を構築する「仮想デスクトップ型」やサーバー上のアプリケーションを共同利用する「SBC(サーバー・ベースド・コンピューティング)型」などがある。

 Windows 7へのバージョンアップを含め、これら3施策を組み合わせて、先ほどの課題解決に当たるしかない。日経SYSTEMS11月号の特集1では、「クライアント端末、マルチ化の処方箋」と題して、3施策の進め方を解説した。ちなみに「マルチ化」とは、多様なクライアント端末を選べるようにすることである。

 特集では、各施策の解説の仕方を変えている。筆者としては、(内容はもちろん)この点にも注目いただけたらと思う。例えば、スマートフォン/タブレット端末の導入の解説では、総合商社の双日でiPadの社内導入を実施した担当者の経験談を日記形式で紹介した。実際の担当者が、どのような思考でどのようなシステム構成を考案していったか、という情報が参考になると思ったためである。クライアント仮想化は、主要な実装方式の長所短所を比較し、Windows 7へのバージョンアップについては、「Windows 7移行、やってはいけない」というタイトルで、アンチパターンをまとめている。一読いただければ幸いである。