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 「クラウドコンピューティング」という言葉が当たり前に使われるようになった。もはや「クラウドなんか必要ない」という声は皆無といってもよさそうだ。しかし筆者は、いま一度、企業システムの基盤としての“クラウド論争”が盛り上がる必要があるのではないかと考えている。

 クラウドという言葉がバズワードで、すでに下火になった、と考えているわけではない。むしろ、クラウドは今後の企業システムにとって不可欠で、当たり前のものになっていくと考えている。特に、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)といったサービスは、企業システムの開発・実行基盤として有力な選択肢になるはずだ。日々の取材を通じて、ユーザーも同様の認識を持っているとも感じている。

 それでも、いま一度論争が盛り上がる必要があると考えるのには理由がある。

否定的な議論がWindowsサーバーの普及を加速させた

 とても古い話で恐縮だが、筆者は1997年に創刊した「日経Windows NT」という雑誌の創刊メンバーである。その名の通り、当時急速に利用が広がっていたWindows NTに関する情報を集めた雑誌である。この雑誌の創刊当時の大きな問題意識の一つは、「企業システムでどこまでWindowsサーバーを利用できるのか」というものだった。Windowsサーバーのユーザーへの取材では、まず「なぜWindowsにしたのですか」という質問から始めたものだ。

 そしてユーザーからは、Windowsサーバーに対する否定的な声が少なからず聞かれた。競合するUNIXベンダーは、Windowsサーバーに対する優位性を強調するプレゼンに躍起だった。我々メディアは、Windowsサーバーが抱える問題点を指摘する記事をこぞって取り上げていた。

 今さらWindowsサーバーを攻撃する気は毛頭ない。言いたいのは、新しいプラットフォームが登場して普及に向かうときには、必ず賛否両論の意見が噴出し、論争ともいえる議論が交わされてきたということだ。Windowsサーバーの後にLinuxが広がりを見せたときにも、同様の議論は起こったと認識している。

 そしてこうした議論のよりどころは、実際に使ったユーザーの経験を基にしたものだった。Windowsサーバーはまず、ファイルサーバーやプリントサーバーなどの用途で、幅広く使われた。Windowsサーバーに否定的だとしても、使ったことすらないというエンジニアは当時ほとんどいなかっただろう。実際に使ってみて、トラブルやバージョンアップ時の互換性問題などを経験し、そのうえで否定的な意見を発していたのである。

 現在Windowsサーバーは、大規模な基幹システムにも当たり前に使われている。製品の進化はもちろんだが、多くのユーザーが早い時期から製品を使っていたことが、より幅広い用途での普及を少なからず加速させたと思う。