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 危機管理というものは非常に間口が広いため、筆者も本コラムで様々な案件を取り上げるようにしている。しかし、個別の専門分野に関しては、筆者の知識が浅薄であることは自分自身でよく承知しているところだ。今回も、専門外の防衛関係の話なので、あくまで筆者の放談として受け止めていただきたい。

分解してしまった機関銃

 筆者はとにかく好奇心が旺盛である。そのため、現場視察に出かけると、あれこれ試してみたり、質問したりして、周囲を呆れさせることが少なくない。 そんな軽々しいまねをせず、勿体をつけてうなずくだけにすれば、もっと威厳のある人物を装えるのだが、性格だからしょうがない。「ちりも積もれば山となる」のことわざのように、こうしたささいな経験や知見も、積み重ねれば自分の見識となるはずと開き直っている。

 20年ほど前のこと、筆者は陸上自衛隊の視察に参加し、そこで各種装備の展示を見せていただいた。ふと眼をやると、机上に数丁の銃器が並べられている。いつもの好奇心がむらむらと湧き出し、「これ、触ってもいいですか」と尋ねると、「タマは入っていませんから、ご自由にどうぞ」という話だった。

 そこで、真ん中に置いてあった機関銃に目を止め、そのキャリングハンドル(銃を携行する時に握る部品、銃身と一体化している)をつかんで持ち上げようとした。すると、次の瞬間、とんでもないことが起きた。

 そのキャリングハンドルごと、銃身がすぽんと外れたのである。つまり、機関銃が分解してしまったのだ。慌てた筆者は、机上に残ったままの機関部分に銃身を差し込もうとしたが、接続部分の緩みが大きくてかっちりはまらない。焦って周囲を見回すと、案内役の方が、「これは壊れたわけではありませんので、そのままにしておいて下さい」とフォローしてくれた。

 視察後、どうして機関銃が分解したのか気になってしょうがなかった筆者は、防衛庁(当時)の知り合いに質問してみた。すると、「機関銃は、もともと銃身が外れるようになっているんですよ」との回答である。

 機関銃が連続射撃をすると、火薬の燃焼ガスによって銃身がどんどん灼(や)けてくる。そのままだと銃身が破裂したり、銃身内部のライフル溝が磨滅したりする(従って、射撃精度が急激に低下する)ので、灼けた銃身を取り外して、別の銃身と交換する構造となっているのだ。

 ただし、この程度の軍事知識は、マニアックな筆者もよく承知していた。筆者が本当に聞きたかったのは、「どうして銃身がこんなにあっさり外れるのか」という点であるが、それに対しては「たまたまそうなったんじゃないですか」と歯切れの悪い返答しか帰ってこなかった。

62式機関銃は欠陥品?

 そこで独力で調べてみると、その機関銃――正式名称は「62式機関銃」――の評判があまりに悪いことに驚かされた。元自衛隊員による文献やインターネットでは、「欠陥品」という評価が定着していたのである。

 筆者が経験したように、62式機関銃は銃身と機関部の結合が甘く、訓練中に銃身がすっぽ抜けるトラブルがちょくちょく発生するようだ。そのため、隊員は銃にガムテープを巻いて、銃身が外れないように工夫しているらしい。さらに、射撃時のブレがひどく命中率が悪い(ネットの動画で、射撃時の映像を他国の機関銃、例えばFN-MAGと比較すると一目瞭然である)、銃身の肉厚が薄すぎるために銃身をすぐ交換しないといけない、部品数が多すぎて整備が難しい、信頼性が低くて頻繁に故障するなど様々な問題があるという。

 そのため、隊員の間では、「62式いうこと聞かん銃」「キング・オブ・クソ銃」(いずれも『そこが変だよ自衛隊!』大宮ひろ志著、光人社刊より)などと馬鹿にされている。もちろん専門家の側からは反論があるだろうが、現場でこれだけボロクソに言われているのはただごとではない。

 ちなみに、1994年に自衛隊が行ったPKO(国連平和維持活動)のルワンダ難民救援では、この62式機関銃を派遣部隊に携行させるかどうか国会で大きな問題になった。筆者は、62式機関銃が「強力な武器」だと激しく批判する某議員のテレビ映像を眺めながら、日本の防衛論議の底の浅さに嘆息するしかなかった。難民側はまさかそんな出来の悪い銃とは知らないから、こけおどしには役立ったことだろう。しかし派遣された隊員の立場とすれば、たまったものではなかったはずだ。

 一般論としては、完成度が不十分な工業製品が市場に出回るのは珍しい話ではなく、改良を重ねて問題点を解決していけば良い。ところが、この62式機関銃については、その後も何の改良もなされずに調達が続けられ、いまだに現場で装備されている。どうしてこれほどの欠点が放置されているのだろうか。

(続く)