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 「速く動くことでより多くのものを作り、速く学べます。しかし多くの企業は大きくなると、速度低下による機会損失よりも失敗をより恐れ、スピードを落としてしまいます。私たちは『速く動いて失敗せよ』と言っています」

 フェイスブックの若きCEO(最高経営責任者)、マーク・ザッカーバーグは、上場に向けた申請書の中で「ハッカーウェイ」と呼ぶ同社の文化をこう説明した(参考記事)。

 マーク・ザッカーバーグの言葉通り、フェイスブックのスピードは驚異的だ。この1年の間に、ツイッターのように友達以外の人をフォローできる「フィード購読」、時系列で個人や企業の投稿を表示する「タイムライン」、友達の動向をリアルタイムで表示させる「リアルタイムフィード」、災害用伝言板機能、「リーチジェネレーター」といった広告機能など、数々の新機能を追加してきた。画面の表示方法などの小さな変更はさらに多い。ユーザー数が少ないサービスならともかく、世界で8億人超が日々使っている巨大プラットフォームに対して、これほどのスピードでサービスを変更していく様子には圧倒される。

 なぜこれほどフェイスブックは、「失敗を恐れずに速く動くこと」を重視しているのだろうか。それはあまりに世の中が速く動き、予測不能になっているからではないだろうか。過去の成功体験をもとに必死に頭をひねって失敗しないように慎重に大きな成功を目指したところで、なかなかうまくいかない。だからフェイスブックは数々の新機能を素早く投入し、ユーザーからの反応をもとに改良を重ねるという方針を取っているのだろう。

HPが陥った「10億ドル」の賭け

 筆者がこう考えるようになったのは、『小さく賭けろ!』という本の編集を担当したからである。本書はアマゾンやスターバックス、ピクサーなどの事例から「速く動いて失敗する」ことの重要性を説いているが、中でも米ヒューレット・パッカード(HP)で上級副社長を務めたネッド・バーンホルト氏の実体験は興味深い。

 HPは1972年、電卓がなかった時代に「HP-35」という電卓を発売した。調査会社からは、「こんなもの売れない」と言われながらも、とりあえず1000台を作って様子を見た。すると、5カ月もしないうちに毎日5000台が売れるほどのヒット商品になったという。1000台という小さな賭けであれば失敗してもそれほど大きな痛手にはならないし、実際には成功につながった。

 しかし約20年後の1990年代、HPは巨大企業になった。「巨額の賭けをしなければならないと、自然に思い込むようになる。当時私の同僚たちは皆、『最低でも10億ドル(約800億円)規模になるビジネスでなければ検討する価値はない』と言っていた」(バーンホルト氏)。巨大プロジェクトを成功させようと、すでに勝者がいる市場に対して遅く動いて失敗した。バーンホルト氏は、著者のピーター・シムズ氏に「というわけで私は、小さく賭けることの重要性を学んだんだ」と話した。

身の回りの小さなチャレンジから始めよう

 ピーター・シムズ氏は、「小さく賭けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返す」ことが重要だと力説している。とはいえHPほどの大企業ではなくても、中小企業でも個人でも、これを実践するのはなかなか難しい。実績を重ねるほど、失うものが大きくなるからだ。

 「ユーザーからクレームが来たらどうするか」「炎上したら大変だ」「ブランドを落としたら取り返しのつかないことになる」「失敗したら上司(社長)に叱られる」といった具合にネガティブに考えてしまいがちだ。そして、慎重になり、検討を重ね、スピードが遅くなる。仕事でなくてもプライベートでも、誰だって失敗はしたくはない。誰もやったことのないチャレンジにはちゅうちょしがちだ。

 しかし、結果としてうまくいかなかったとしても、「本気でこれはイケる!」と思ってチャレンジして失敗したことなら、そこから得るものは必ずあるはずだ。失敗の原因を探って学習し、方向性を変えて再チャレンジする。それを素早く繰り返せば、ライバルよりも「小さな勝利」をつかめる確率が高まるのは当然だ。何より小さな失敗なら、取り返しは十分つく。

 新年度のスタートを機に、読者の皆さんも仕事や身の回りのことで、小さな賭けにチャレンジするのはいかがだろう?