PR

 「パートナーに怒られるかもしれないが、当社はサービスの製品化を推進する」。日本オラクルの遠藤隆雄代表執行役社長・最高経営責任者は2012年7月11日に開催した同社の事業戦略説明会で、これから目指す方向をこう説明した。

 理由は明快だ。IT予算の半分を占めるサービス需要を取り込むためである。ここでのサービスとは、おそらくシステム構築や運用、保守のことで、それらを自動化、効率化する機能を安価に提供するということだろう。まさに販売パートナーである受託ソフト開発会社やシステムインテグレータなどIT企業の収益源である。

 多くのユーザーは、ITインフラやアプリケーションを長期間使い続けている。日本オラクルによると、IT投資が年間130億ドル(約1兆円)になる米国の銀行は、ITインフラを約10年間、アプリケーションを約15年間にわたり使用するという。また、多くのユーザーはIT投資の64%を既存システムの維持管理(運用や保守など)、20%を既存システムの拡張に割いており、事業変革に振り向けるのはわずか16%とも説明する。IT投資を抑制する効果はあるだろうが、イノベーションが起きていないことにもなる。

 その一方で、新しいビジネスを立ち上げて、そこからの収益を伸ばそうと企てているユーザーも少なくない。そのニーズに応えるために、日本オラクルはサービスコストを下げて「データを価値に変えるスピードを上げていく」(三澤智光専務執行役員)という。「ITの利用価値を上げれば、ユーザーのIT投資は増える」と遠藤社長は確信する。サービスの製品化を推し進めるのは、そのためだ。

IT企業にビジネスモデルの転換を迫る強力な製品を作れるか

 実は、10年以上前から米IBMをはじめとする有力ITベンダーが“サービスの工業化”に取り組んでいる。システム構築の開発期間を大幅に短縮し、導入効果がすぐに分かるようにするためで、その有力策がソフトの部品化だった。究極の姿は「ソフト部品を組み合わせるだけでシステムが完成する」というものだったが、部品の品ぞろえが十分ではなかった。価格も明確ではなかった。自らのビジネスモデルを崩壊させる可能性があったからかもしれない。

 そうしたなかで、仮想化や自律化、統合化の技術を駆使したクラウドコンピューティングが登場した。クラウド環境を支えるデータベースなどのアプライアンス製品も出てきた。オラクルはサン・マイクロシステムズの買収によってアプライアンス製品を拡充し、「セールスフォース・ドットコムに次ぐ、世界2位のクラウドベンダー」(三澤専務)になった。サービスの製品化が着実に進んでいるというわけだ。

 課題の一つは、ユーザーの期待値を超える効果を出せるかにある。ユーザーを感動させ、感激させることともいえる。遠藤社長によると、製品やサービスを他人に薦める一番の理由は、「商品の良さ」や「価格の安さ」より、「素晴らしい対応を受けた時」だという。別の言い方をすれば、「IT企業にビジネスモデルの転換を迫る強力な製品を用意すること」だ。それが年率12%成長の中期経営計画を達成するための大きなカギとなるだろう。