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 CATV会社との連携を深め、「打倒NTTグループ」を掲げるKDDI。CATV会社との提携範囲はこれまで、電話(ケーブルプラス電話)や映像配信(MOVIE SPLASH VOD)の提供にとどまっていたが、ここにきて急拡大している。

 KDDIは昨年末から一部のCATV会社と組み、CATV回線とau携帯電話のクロスセルを開始。3月に投入した割引サービス「auスマートバリュー」では、割引を適用するセット契約の対象にCATV回線も加えた。CATV会社の指定サービスとauスマートフォンを一緒に利用すれば、スマートフォンの通信料が月1480円引きとなる(1回線当たり最大2年間、2年経過後は月980円引き)。7月にはAndroid 4.0を搭載した次世代STB「Smart TV Box」も発表し、「スマートテレビ」を先取りするサービスとしてCATV各社と拡販していく方針を明らかにしている(関連記事:詳細が判明したKDDIのAndroid搭載「Smart TV Box」)。

 だが一方で、不協和音も聞こえてくる。一部のCATV会社にはKDDIと連携を深めることで「サービス提供の主導権や顧客を奪われてしまう」との危機感がある。「KDDIの方が一枚も二枚も上手。うまく利用されて終わるだけ」(CATV会社幹部)と冷めた声も出ている。提携CATV会社の数が多いことに加え、企業規模や方針の違いなどもあって、なかなか一枚岩となれない難しさがある。

ジュピターテレコムがSmart TV Boxの採用に難色

 「技術的、営業的な見地からどう採用するか、慎重に検討している」。ジュピターテレコム(J:COM)の森修一社長は7月24日の第2四半期決算説明会で、KDDIのSmart TV Boxの採用についてこう説明した。

 KDDIはJ:COMに30.8%(昨年12月末時点)を出資する第2位株主で、2010年6月には次世代STBの共同開発を表明済み。KDDIのSmart TV Box(パナソニック製)を真っ先に採用するのが筋だが、J:COMが来春に提供する次世代STBの開発ベンダー候補として名前を例示したのはパイオニアや韓国HUMAXだった。

 J:COMの森社長はSmart TV Boxの採用について「まだ決まっていない」との回答にとどめているが、当面の採用はなさそうな気配だ。理由はいくつかある。まずJ:COMが問題視しているのは、Smart TV Boxがインターネット接続サービスの契約を前提としている点。厳密にはネット契約がなくてもSmart TV Boxを使えるが、「Smart TV BoxでRF(放送)に対応しているのは下りだけ。(上りも使う)VODをはじめとした双方向のサービスは使えない。ネット契約が不要の顧客も依然として多く、ネット契約の有無でSTBを売り分けるとなると営業サイドに大きな影響が出る」(J:COM幹部)。

 Smart TV Boxの価格の高さも課題となっている。J:COMが計画する次世代STBは「Smart TV Boxの半分以下の1万円台で実現できる見込み」(同)という。

 KDDIに主導権を奪われるとの懸念もあるようだ。「Smart TV Boxでは『au ID』の取得が前提となり、サービス企画やシステム運用もKDDI側に移る。CATV会社のために作られたものではなく、あくまでKDDIの3M戦略のためのもの」(J:COM幹部)。J:COMはKDDIと共同で日本ケーブルラボの次世代STB仕様を策定したが、考え方にズレがあるという。「CATV業界はRFを中心にIPを付加するアプローチだが、KDDIはIPを中心にテレビを付加するアプローチになる」(同)。Smart TV Boxは日本ケーブルラボの次世代STB仕様に初めて準拠した製品となるが、CATV業界にとっては受け入れ難い仕様になっている。

 サービス面の競合も考えられる。Smart TV Box向けに提供されるアプリには、月590円で映画やドラマ、アニメが見放題の「ビデオパス」(KDDIが提供)をはじめ、ドワンゴの「ニコニコ動画」や「ニコニコ生放送」、Googleの「YouTube」などもある。これらサービスに利用者の視聴時間を奪われ、CATV会社が提供する多チャンネル放送や映像配信サービスの契約数が減少する恐れがある。