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 先日、ドワンゴの子会社であるキテラスの鈴木慎之介代表取締役社長に話を伺う機会があった。キテラスでは、ドワンゴらが提供する動画配信サービス「niconico」の家電製品への対応を進めている。ソニーとパナソニックのテレビ向けに、niconicoを利用するためのアプリケーションをリリースしたことを受けて、開発の狙いや経緯について聞いた。その際、日本の家電メーカーにとって、スマートテレビがスマホの二の舞になりかねないという鈴木社長が抱く危機感の話が印象に残った。

 現在国内市場向けに発売されているテレビでは、ネットサービスを利用するためのプラットフォームがメーカーごとに異なり、テレビ向けniconicoアプリの開発はメーカーごとに対応する必要があった。ソニーとパナソニックは、日本メーカーの中でも開発環境が整っているにもかかわらず、アプリ開発は当初考えていた以上に苦労したという。

 今後スマホやタブレット端末と共通の基盤を採用する世界がテレビにやってきた時、圧倒的な開発リソースを持つプラットフォームと、メーカー個別のプラットフォームが戦うことになる。データ放送やアクトビラによるVODサービスなど、これまでも日本のテレビは積極的にネット関連サービスを提供してきた実績を持っている。しかしアプリケーションの重要性が増す中、テレビの出荷台数ではナンバーワンではない日本メーカーが、各社独自のプラットフォームのまま世界で戦っていけるのか――。鈴木社長の話を聞いてこんな疑問を覚えた。

 世界的に最先端の携帯電話機を作っていたはずの日本メーカーが、スマートフォンという新潮流に乗り遅れた結果、世界市場で存在感を示せなくなった過程を改めて繰り返すような、こうした「スマホの二の舞」はぜひとも避けなければならない――これが鈴木社長の抱く危機感だった。

 スマホの二の舞を避けるには、どういうプラットフォームが望ましいのか。鈴木社長は「W3Cで議論が進むHTML5など、Webのオープンプラットフォームへの対応を進めてほしい」と注文した。

総務省が音頭を取り、標準化作業が進行中

 スマートテレビの標準化については、既に総務省が中心となって放送と通信の連携サービスの実現を主眼とした作業を進めている。こうした取り組みが進めば、一つのアプリをメーカー横断的に利用/提供しやすくなり、サービス提供者にとってメリットは大きいはずだ。

 ところがこの取り組みについて話題を振っても、鈴木社長の顔の曇りは晴れない。理由を尋ねると、スマートテレビ規格標準化の趣旨については大いに賛同するものの、そこに日本独自のルールを持ち込むことで、結局日本国内ローカルの共通基盤としかなり得ない可能性を懸念してのことだった。例え国際標準をベースとしていても国内向けに独自の拡張が行われると、グローバルなサービス展開を考えているサービス事業者にとって、とたんに使いにくいものになるという。

 鈴木社長は「放送とネットの融合サービスについて、やってみたいアイデアはたくさんある。ハードウエアやサービス向けの規格統一に加えて、コンテンツ流通に関する法整備も進めて、思いついたアイデアをどんどん試して新しいビジネスを迅速に展開できる環境を整える必要がある」と、サービス事業者から見た環境整備のあり方を説明した。

 なお、総務省が進めるスマートテレビの標準化作業でも、鈴木社長が指摘したような点は検討項目として盛り込まれている。2012年6月に発表した資料では、「民間事業者が推進しやすい環境整備」や「国際標準に則ったオープンな事業環境の構築」を重視する方向性を明確に打ち出している。ただし現在検討作業中であり、実際の実装段階でどこまで方針に沿ったものになるかは未知数だ。

 こうした標準化の取り組みが最終的にどう落ち着くかが、放送と通信が融合した時代のスマートテレビの今後の方向性を決めることとなりそうだ。