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 米アマゾン・ドット・コムの電子書籍リーダー「Kindle」が、ついに日本に上陸した。米アップルが発表したばかりの小型タブレット「iPad mini」よりも安い「Kindle Fire HD」などの端末と国内大手出版社の電子書籍を取りそろえて、話題をさらっている(関連記事)。アマゾンの大きな話題性の一方で、同社とそれを率いるジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)の素顔は、意外なほど知られていない。実績の大きさと情報の少なさゆえに、筆者は彼らのことがずっと気になって仕方がなかった。

 ご存知の通り、アマゾンのすごさは電子書籍事業のKindleだけではない。本をはじめとしたあらゆるものを扱うショッピングサイトを運営し、クラウドサービスでもトップを走る。

 年間売上は4兆円を超える巨大企業。時価総額は1100億ドル(約8兆8000億円)と、日本なら時価総額1位で約10兆8000億円のトヨタ自動車に次ぎ、2位で約5兆5000億円のNTTドコモを上回るほどの規模だ。サービスを始めたのは1995年で、17年でここまで築き上げた。

顧客第一主義を掲げて急成長

 そのアマゾンが会社概要で最初に掲げるのが、「地球上で最もお客様を大切にする企業」。ベゾス氏はあまりインタビュー取材を受けないが、たまにメディアに登場すると、アマゾン飛躍の理由は「顧客中心主義」だと力説する(参考記事)。

 確かに、アマゾンの顧客中心主義は素晴らしい。例えば、「カスタマーレビュー」。ユーザーが本の評価を自由に投稿できる機能で今となっては当たり前だが、販売する側が商品に対する批判も含めて表示するのは、勇気がいることだ。それを「顧客中心主義」で採用に踏み切った。

 ほかにも、KindleではあらかじめユーザーのIDやパスワードが登録された状態で届くので、すぐに商品を買えるのも特徴的だ。他社の端末でユーザー自身が登録作業をするのが当たり前なのと比較すると、アマゾンの顧客主義はサービスや製品に浸透している。

カスタマーサービスのメール返信、1分6通以下はクビ

 もっとも、アマゾンがユーザーのことだけを考えているのかというと、どうもそんなふうには思えない。筆者が編集を担当した単行本『ワンクリック』では、1998年にアマゾンに入社したカスタマーサポート担当の元社員のあるエピソードが紹介されている。

南北戦争時代の小説に興味があるからジェームズ・ミッチナーの『センテニアル』を探していると言われ、それならゴア・ヴィダルの『リンカーン』のほうがいいとすすめた。(中略)しかし、この電話への対応に3分から4分もかかったとして上司に怒られてしまう。結局、ハワードは生産性が低すぎるという理由により3週間半でクビになり、マイクロソフトの契約社員に転職することになった。

 現在では、Webページを見ても電話番号は見つからない。カスタマーサポートへの連絡は原則としてメールだけである。そのメールにしても、「1分6通以下(のカスタマーサービス担当者)はたいていクビになる」という記述がワンクリックにあるように、きめの細かい対応ができているとは思えない。