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 今に始まったことではないが、IT企業のSEにとって顧客の担当者と良い関係を築くことはそう簡単ではない。事実、顧客の担当者との関係がうまく行っていないSEは少なくない。きっと読者の皆さんの周りにもいると思う。

 顧客との関係がギクシャクしていると、システム開発で「言った、言わない」などと往々にして揉める。そしてプロジェクトの進捗に悪影響を及ぼし、開発の遅れなど様々なトラブルが起る。それでは顧客もIT企業も困る。

 そこで今回は、「SEは何をやれば顧客の担当者と良い関係ができるか」「そのポイントは何か」について、筆者の経験をもとに述べたい。

「困らせない、困っていたら助ける、働きやすくする」という大原則

 まず、筆者はSEの皆さんにこう言いたい。「答えは簡単である。あれこれとあまり難しく考えない方がいい」。

 逆の立場になって考えるとすぐ分かると思うが、顧客の担当者を「困らせない、困っていたら助ける、働きやすくする」――そんな仕事のやり方をすればいい。それが答えである。そのためには、言うまでもないがSEは顧客の担当者が日頃どんな状況か、どんなことで困っているか、そして悩んでいるか、それらを知らなければなるまい。

 筆者はそう考えて、前回、顧客の担当者の実情について言及した。彼ら彼女らは、(1)実にいろんな仕事をしている、(2)技術力を身に付けるのには限界がある、(3)ITに疎い上司に困っている、(4)いろんなことで悩んでいる、(5)本当はSEを頼りにしたいと思っている、という状況にある。SEはこの5点を頭に入れ、「彼ら彼女らを困らせない、困っていたら助ける、働きやすくする」という考えで仕事をすることが重要である。これが良い関係を築く大原則である。

 では、SEは具体的に何をすればいいのか。教科書的に書けば「プロジェクトをしっかりやる。約束を守る。あやふやなことは言わない。嘘をつかない。ITやアプリケーションやプロジェクト管理のスキルを持つ」などと言うことになるが、それでは面白くない。そこで実務レベルの視点で、筆者が現役時代に部下のSEに求めていたことを説明する。

[その1]顧客と壁を作らない

 筆者はこれまでこの連載で、SEは「これは自分たちの仕事、これは顧客の仕事」と線を引くな、顧客との間に壁を作るな、としつこく書いてきた。それは、SEが壁を作ると顧客の担当者を困らせることになり、「困らせない、困っていたら助ける、働きやすくする」という大原則に反するからである。それでは決して良い関係は作れない。壁を作ることは、良い関係作りにとって最悪の行為である。そんなSEは顧客との良い関係作りなどは考えないで、マンパワーとして与えられた仕事だけをやることだ。

 こう言うと、SEの中には「壁を作らないと仕事が増え、赤字になる」と言いたい人もいると思うが、それは早計である。顧客の部課長は、部下とSEが一体になり、ゴールを目指して頑張っていれば、個々の仕事を部下がやろうがSEがやろうが、そんなことは些細なことである。要は部課長にとっての最大の関心事は、プロジェクトが成功すること。SEはそのことを念頭に置き、顧客の中に飛び込んで、壁を作らず一体となって仕事をすれば、決して赤字にはならない。これは多くの顧客と仕事をしてきた筆者の経験から断言できる。