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 今年は東ガス・ショックからちょうど10年、と書いてもそれを知らない読者も多いだろう。2002年12月13日、日経新聞朝刊の1面に「IP電話全面導入 東京ガス 通信費半分以下に」という大きな見出しの記事が掲載された。東ガス・ショックの始まりである。当時企業がほとんど使っていなかったIP電話を導入することが世間を驚かせた。

 筆者が東京ガスから受注したのが2002年11月、実際に稼働開始したのは2003年6月30日だった。その日の現場はNHKが取材し、7月8日放送の「クローズアップ現代」で取り上げられた(2003年7月8日放送回の概要ページ)。企業ネットワークに関することが日経の1面やテレビで取り上げられたのは、筆者の知る限り空前絶後である。その後1年くらい、大企業がIP電話を採用すれば新聞の記事になる、という状態が続いた。IP電話ブームである。

 それからちょうど10年たった現在、企業のIP電話はどうなっているのか、これからどうあるべきなのか、述べたい。

企業内のIP電話は停滞

写真1●東京ガスをファーストユーザーとして開発されたユニデンの「IP-100」
写真1●東京ガスをファーストユーザーとして開発されたユニデンの「IP-100」
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 東京ガスのIP電話の目的は設備コストの削減だった。ネットワーク費用で大きな比重を占める電話設備を安くするため、高価なPBXを安価なサーバーとソフトウエアで代替できるIP電話を提案したのだ。

 提案を実現するうえで最大のネックだったのは、当時、安価なIP電話機がなかったことだ。偶然、新聞でユニデンという会社がSIP(IP電話のプロトコル)をサポートする電話機を作ることを知り、「1万円のIP電話機を作ってください」とお願いした。提案時点では図面しかなかったが、半年後にはきちんと動いた(写真1)。

 その後のIP電話ブームでは設備コストの削減という目的は掲げられず、プレゼンス(在席表示)を使って無駄な電話取り次ぎをなくすとか、ワークスタイルを変革するといった、経済効果の見えにくい目的がうたわれた。その結果、思ったほどIP電話は広がらず、特に既設のPBXを更改する案件では、レガシーPBXと比較して高価で敬遠された。レガシーなら既存の配線やアナログ電話機がそのまま使えるが、IP電話化のためには電話機をすべて交換しなければならないし、LANも再配線することが多かったからだ。IP電話が採用されるのは新築オフィスビルへの移転などで、設備が刷新されるケースが多かった。

 企業内の電話はインストールベースではまだまだIP電話よりレガシーの方が多いのが実情だ。