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 「以前から難しかったのだが、最近特に難しくなってきた」。多くのプロジェクトマネジャー(PM)は、口々にこう話す。難しくなってきたのは「ステークホルダーマネジメント」である。

 ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトの利害関係者(ステークホルダー)に参画意識を促し、プロジェクトへの協力者に変えていくこと。こう定義すると単純そうだが、実際はそうではない。プロジェクトには参画意識が低かったり、プロジェクトそのものを面白く思っていなかったりするステークホルダーがいるもの。そうしたステークホルダーを協力者に変えていくのは簡単ではない。管理能力だけではなく、良好な対人関係を築くための「人間系スキル」が必要になるからだ。

 冒頭のコメントは、日経SYSTEMS 3月号の特集「プロジェクトの協力者を増やす ステークホルダーマネジメント」の取材中によく聞いたもの。なぜステークホルダーマネジメントが以前に増して難しくなってきたのか。取材を基にすると、その理由を大きく二つに集約できた。

 一つは、プロジェクトの広がりだ。クラウド技術の進展などから、システムの共同利用が容易になり、グループ企業や海外拠点を巻き込むプロジェクトが増えてきた。ステークホルダーの範囲も当然広がっている。すると、関与度合いが低い「無関心」なステークホルダーも多くなりやすい。言うまでもなく、無関心なステークホルダーの参画意識を高めるのは難しい。

 もう一つは、抜本的な業務変革に踏み込むプロジェクトが増えたことだ。企業の組織構造に手を加える場合もある。こうしたプロジェクトでは、ステークホルダーに「抵抗感」が生まれやすい。ステークホルダー同士の利害衝突も起こりがちだ。それらを乗り越えてステークホルダーを一つのゴールに向かわせるのは容易ではない。

PM知識体系ガイドの新版では知識エリアとして独立

 ステークホルダーマネジメントが難しくなってきたことについて、PMI(Project Management Institute)日本支部の神庭弘年氏(会長)は「難しくなったからといって嘆くだけではダメだ。PMが自分から積極的に協力者を増やす取り組みが求められる」と言う。PMにとって、ステークホルダーマネジメントがこれまで以上に重要になっているというわけだ。

 こうした状況を反映し、米PMIが2012年12月に公開した「PMBOKガイド 第5版」(英語版、正式名称は「A Guide to the Project Management Body of Knowledge - Fifth Edition」)では、「ステークホルダーマネジメント」が10番目の知識エリアとして新設された。第4版までは「コミュニケーションマネジメント」の中の1要素でしかなかったので、格上げされた形だ。ちなみに、知識エリアの新設は、1996年の第1版の発行以降は1度もなく、PMBOKの歴史のなかでも画期的な出来事だという。世界的に見てもステークホルダーマネジメントが重要視され始めたということである。

 そこで今回の日経SYSTEMSの特集では、一線級のPMに取材し、ステークホルダーマネジメントに関する現場ワザを多数掲載した。一例を挙げると「真のキーパーソンを見つけるワザ」「印象を良くする会議進行のワザ」「確実に合意を得るワザ」などである。

 また、PMI日本支部にお願いしてPMBOKガイド 第5版の解説もいち早く掲載している。さらに、ステークホルダーマネジメントを架空のストーリーとクイズで体験できる「誌上シミュレーション」も設けた。悩めるPMの一助となれば幸いである。