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 この連載では、「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回までは、八つ目のダメ説明である「先を読まない、場当たり的、その場しのぎ」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。

「10のダメ説明」

  1. 長い、細かい、テンポ悪すぎ
  2. 論点不明、主旨不明、結論なし
  3. 抽象的、具体的でない、表面的
  4. 理由がない、何故?が満載、説明が不足
  5. 独りよがり、自分視点、自己中心
  6. 遅い、ぎりぎり、時間なし
  7. 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
  8. 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
  9. 思想がない、考えがない、自分がない
  10. 反論する、否定する、対立する

 今回から、九つ目の「思想がない、考えがない、自分がない」をテーマとする。

権威者の言うことを鵜呑み、他人任せで自分の考えを持たない

 筆者の指導する説明術において、「思想がない」とは、「自分の行動のベースにポリシーを持たない」ことを指す。行動のポリシーがないので他人…、特に権威者(会社では上司、上長または専門的知識を持つ担当者)の意見に振り回されるという特性を持つ。

 また「考えがない」、「自分がない」は、ここではどちらも「『自分』の判断の根拠となる『考え』」を持っていない」という状況を指す。何しろ、『自分の考え』を持たないので、どうしても他人の行動に従うことになってしまう。

 「思想がない、考えがない、自分がない」人の説明は相互矛盾を引き起こすことが多いので厄介である。なぜなら、自分の考えがないので、自分より権威がある人の意見を簡単に受け入れてしまうからだ。

 しかも、複数の他人の言っていることが相互に矛盾していても、そのすべてを「YES」「了解した」「それはよい考えだ」と納得し、受け入れてしまう。これが支離滅裂になる直接の原因である。これを具体例で説明しよう。

 例えば、複数の上長に企画を説明していたCさんがいたとしよう。上長A課長は「この事案は時間がかかってもよいから、しっかり調査して進めるべきだ」と言い、上長B課長は「この事案はスピード勝負。トライアンドエラーですぐ着手すべき」と言ったとする。この二つは真逆の主張である。

 「自分の考えがない」人はここでドロ沼に嵌(はま)る傾向にある。A課長の意見に「それはそうですね。そうします」と答え、B課長の主張に「自分もスピードが大事だと思ってました」と言ってしまうからだ。この結果生じるのは、上長2人の「意見調整地獄」である。

 ただし、Cさんが「高度な思考力」を持っていればそうはならない。なぜなら、この2者の主張を双方満足させる方法もあるからだ。まず、試験実施などを行い、トライアンドエラーで、データを蓄積して成果が出るモデルにブラッシュアップし、その後に本格実施する方法などが考えられる。

 こうすれば上長2人も納得し、間に挟まって苦労する可能性は低い。しかし、Cさんに「自分の考えがない」場合はダメである。意見調整ができず、最後は仕事がストップし、周囲に多大な損失を与える可能性をはらむのだ。

 特に、Cさんのような人が管理職で部下がいる場合は最悪である。ドロ沼に嵌ったツケは必ず部下に回ってくる。他人に挟まれた状況で、部下に解決を任せるので、部下はがんじがらめで苦しむことになる。

 このように、「思想がない、考えがない、自分がない」説明をする人は、それが著しく評判を下げる「ダメ説明」につながることを自覚した上で、早く矯正する必要がある。

 もしも、いつまで経っても矯正されないのであれば、会社の経営陣は、その人の存在が「社員のモチベーションが大幅に下がるリスクがある」ことを強く意識し、組織を維持し、業績を上げるために速やかに指導して欲しい。それが会社の経営者の役割であると筆者は考えている。