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 システム開発のプロジェクトなどでリーダーを務めた際に、チームメンバーが期待通りに動いてくれずに悩んだことはないだろうか。ITの現場では一般に、いわゆる体育会的な、ぐいぐい引っ張るリーダーシップに苦手意識を抱いている人が多いと言われる。そんな状況で、エネルギッシュに懸命に引っ張ろうとしたら、かえってチームがギクシャクしかねない。とはいえ、業務を割り振ったら任せっぱなしという姿勢でも、メンバーからの信頼を失ってしまう。

 では、どうしたらメンバーは付いてきてくれるのだろうか。そのヒントを探るため、筆者はスポーツ界のチームリーダー2人を取材した。一人は、早稲田大学ラグビー蹴球部監督時代、全国大学選手権で2連覇を達成した中竹竜二氏(日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター)。もう一人は、全日本女子バレーボールチーム監督の眞鍋政義氏である。眞鍋氏は、ロンドン五輪でチームを銅メダルに導いた。8月28日からは、「ワールドグランプリ2013」の決勝ラウンドに臨む。

 なぜ中竹氏と眞鍋氏に取材したのかといえば、ぐいぐい引っ張るリーダーとは対照的なタイプで、しかも十分な実績を上げているからだ。引っ張ることに苦手意識を感じているIT現場のリーダーにとっても、参考となる話を多く聞けるのではないかと期待した。

 その期待通り、両氏は“引っ張らない”リーダーシップを実践していた。具体的には、選手やスタッフといったチームメンバーとコミュニケーションを取り、チームが目標を達成するまでのプロセスと、その過程で各メンバーが取るべき行動を共有。メンバー全員に「どんな状況で自分がチームに貢献できるのか」を理解してもらい、実際にその状況が訪れた際には、リーダーシップを発揮して行動するように促していた。

 要するに、リーダーが常に中心にいて周囲を引っ張る代わりに、メンバー一人ひとりが自ら考え、その時々の状況に応じて最適なメンバーが自ら主役となって、リーダーシップを発揮するようなチーム作り上げていたわけだ。つまり引っ張らないリーダーシップは、「メンバー全員を主役にするリーダーシップ」と言い換えられる。

変化対応力が求められるIT現場とも相性は良い

 メンバー全員を主役にするリーダーシップを取る効果として、中竹氏はチームに変化対応力が備わることを上げる。「今は変化が激しい時代。優秀なリーダーだからといって、常に正しい答えを出せるわけがない。だからこそ、その時々の状況に最適なメンバーが答えを出す必要がある」(中竹氏)。

 変化対応力が強く求められているのは、最近のIT現場も同じだ。『ITプロジェクトをやり遂げる 最強リーダーシップ』(日経BP社)の著者であるデロイト トーマツ コンサルティングの金澤 透氏(執行役員 パートナー)は、最近のシステム開発プロジェクトの特性について「技術革新や経営環境の変化が激しく、仕様変更への柔軟な対応がこれまで以上に求められる」と指摘する。

 仕様変更などの状況変化に常に柔軟に対応するには、役職上のリーダーが一人でリードするだけでは難しい。状況に応じて適切に判断できるメンバーがリードしたほうが、円滑に進むことが多いだろう。

 また、メンバーに背中を見せてぐいぐい引っ張るリーダーシップのスタイルが通用するシーンが以前より減っており、しかも難易度が上がっているという指摘もある。経営コンサルティング会社であるジェネックスパートナーズの眞木和俊氏(代表取締役会長 シニア・パートナー)は、「社会的に正誤の判断に対する自由度が高まり、リーダーとメンバーで状況に対する認識に食い違いが起こりやすくなった」と話す。リーダーが良かれと思って取った行動でも、メンバーにその意図が正しく伝わらないケースが増えているわけだ。

 こうした点を踏まえて、IT現場のリーダーシップについて詳しいリクルートマネジメントソリューションズの早川 淳氏(HRD トレーナー)は、「取り組みの意味や理由を、メンバーにしっかりと伝えることが大切」と指摘する。チームの目標とメンバーの行動をすり合わせる中竹氏や眞鍋氏のアプローチは、この早川氏の指摘にピタリと当てはまる。

 実は今回の取材で、ITの現場でも開発プロジェクトなどで成果を上げているリーダーの多くが、メンバー全員を主役にするリーダーシップを取り入れていることが分かった。中竹氏や眞鍋氏、IT現場のリーダーの詳細な取り組みについては、日経SYSTEMS9月号特集「メンバー全員を主役にするリーダーシップ」に記述した。興味をお持ちであれば、ぜひご一読いただきたい。