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 稀代のビジョナリー、スティーブ・ジョブズが亡くなって2年半がたち、米アップルは今、正念場を迎えている。ジョブズが去ってからも、アップルはiPad mini、iPad Air、iPhone 5s/5cなどの新製品を出してきたが、毎回、発表後には少なからず期待外れだという声が上がるようになってきた。

 それは、アップルの業績が輝かしくてもである。アップルは、2013年度(2012年10月~2013年9月)は売上高が1709億ドル(約17兆円)、純利益が370億ドル(約3兆7000億円)というまぶしいくらいの実績を上げている。

 普通なら、超優良企業として高く評価されるだろう。むしろ、これほどの規模の企業でありながら、毎年世界を驚かすような商品を機動的に出してきたほうが不思議なくらいである。

 しかし、誰もがアップルに対しては、世界中が驚くようなすごい製品を出すだろうという大きな期待を抱いてしまう。その一因は、スティーブ・ジョブズとアップル自身が、そう演出してきたことにもある。アップルは、新製品の情報を発表まで極力秘密にする。

 そして、ジョブズが驚異のプレゼンをして、新製品をたまらなく魅力的で素晴らしいものと見せてきた。そのプレゼン力は、現実を歪ませてしまうくらいだとして、「現実歪曲フィールド」と呼ばれていたくらいだ。実際に、登場する新製品も世界中を驚かすような出来栄えだった。

 ところが、現実歪曲フィールドの使い手がこの世を去り、魔法が解けた後、アップルにはイノベーションが起こらなくなっていった。かつての魔法で、単なるよい製品では満足できなくなった人々は、後を継いだティム・クックCEO主導の発表後に落胆してしまう。

 そして、画期的な製品が登場しない本当の理由は、アップルの秘密主義のためになかなか外には伝わらない。そのような状況下で、秘密主義のアップルを相手に丹念に取材して、その現実を白日の下にしたのが、ジャーナリストのケイン岩谷ゆかり氏だ。