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泉下:君、上司に向かって失礼じゃないか。君はそういうことに口を出す立場じゃない。君には関係ない。浮島がどこで何しようと、どうせお前は勝てないだろ?

岡村:あいつが部長の言うこと聞くはずないじゃないですか!

泉下:岡村、口を慎め。まあ、君も自分の今後を良く考えるんだな。ではこれで失礼する。

 部長は、社長に何か言われたに違いなかった。おそらく、社長はフロントローディング方式に強い興味をもったのではないか。そして泉下部長はそれを察して、開発部でなら自分の配下ならできる、と言った。

 そのためには上田だけではなく、補佐役がいる、その人物を異動させてほしいと要望した。それがあの会議の最後に「浮島には補佐を頼む」と言った意味だ。これが岡村の読みだった。

 そのとき、岡村のスマートフォンに着信があった。相手はニュービジネス企画の石黒次長だった。

 「岡村君、なあ、今日の夜空いてるか? 一緒に飲みに行かないか?」

 岡村氏は、石黒次長とは面識はない。しかし、電話番号を調べてスマートフォンに直接かけてくる以上、重要な事項なのだと直感した。

「ねえ、岡村君、聞こえてる?」
「……すみません。はい、よいですけど、どこにしますか」
「今からマップアプリで場所を送る。そこに19時に来てくれるか」

 その店は、東京・神田小川町の大きいスポーツショップのあるビルの最上階にあった。ドアは山小屋風の木造で店内は暗く、プラネタリウムで投影した星が天井に天の川になって光っており、とても美しかった。

 店員に予約があることを告げると、テントをイメージした個室に案内された。店員が長野の地ビールをもってきた。二人はビールをプシッと開けて乾杯した。30分くらい他愛のない話をして酔いも回ったころ、石黒次長が話題を変えた。