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日本には何が残っているのか

 「良く分かっていない、ややこしいことを言わなくても、日本には日本の文化がある、それを生かして、日本なりに広義のソフトウエアを取り入れていけばよいではないか」という意見もあるだろう。

 その点に関して4年近く前の2010年10月、プロジェクトマネジメントのプロフェッショナル団体であるPMI東京支部の催しで面白いやり取りをしたことがある。現在アスカプラニングの代表をしている永谷裕子氏と筆者の二人で、『PMの食あたりと食わず嫌いを防ぐ方法』という奇妙な題名の対談をした。

 PM(プロジェクトマネジメント)の食あたりとは、手法をそのまま日本の現場に適用したものの、かえってプロジェクトがうまくいかなくなっている状態を指す。食わず嫌いは「あんな手法ではうまくいかない」と最初から拒否したり、「プロジェクトマネジャだけはやりたくない」と言ったりする姿勢を言う。

 永谷氏は米国の大学で学び、米企業数社の中でプロジェクトマネジャを務めてきた猛者であり、日米の違いを熟知している。その永谷氏は対談で次のように話した。

 「マネジメントフレームワークにそって、しっかり計画を立て、プロを集め、役割や権限を決めて進めるのが米国流だが課題もある。それはチームの人間力を引き出すこと。メンタリングやコーチング、動機付け、信頼に基づくチームビルディングといったことに米国のプロジェクトマネジャたちは取り組んでいる。しかし日本には和魂というものがあり、全員が一丸となって取り組む姿勢がもともとある。日本はマネジメントやドキュメンテーションの手法をツールとして取り入れればよい」

 これを聞いた筆者は「日本における信頼関係はかなり怪しくなっている。そもそも和魂を皆さん持っているのですか」と放言してしまった。米国でみっちり仕事をした永谷氏が和魂に言及し、日本でしか仕事をしていない筆者が否定的な応答をするという妙な対談になった。先に書いた通り、筆者は一神教を理解できず洋魂など分からない。日本人である以上、和魂を持っているはずだが、それがあるから欧米生まれの広義のソフトウエアを使いこなせるとは到底言えなかった。

 似た例をもう一つ挙げてみよう。米国でアジャイル開発やパターンランゲージの利用に取り組んでいる技術者たちは、日本や東洋に対する思い入れを持っている。アジャイル開発の元祖はトヨタ生産方式であるとか、パターンに基づいたアプローチの故郷は日本文化ではないか、といった発言がなされる。そうした発言をする技術者は、禅や「わびさび」について日本人以上に詳しかったりする。