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■米Microsoftが2005年8月終わりにベータ1を提供した「WinFS」は,同社が長年開発してきた次世代のデータ・ストレージ・エンジンである。「Object File System(OFS)」「Storage+」「Relational File System(RFS)」と名前を変えながら開発が続いたこのソフトウエアは,Longhornが次期Windowsの開発コード名になるころ,WinFSという名前で再度登場する。しかし,同社はLonghornの開発計画を見直した際,基本機能からWinFSを削除した。再びWinFSは実現しそうにない状態に落とされ,完全に忘れ去られた。




 ところが,そんなはずはなかった。数年の遅れにも関わらずWinFSは,Microsoft社内で優先開発事項であり,その翌年にかけて,同社は文字通りの小さな驚きを準備した。2005年8月,MicrosoftはWinFSのベータ1,しかもWindows XP専用のバージョンを発表した(今後のベータ版は次期OSであるWindows Vistaや他の最新のMicrosoftのプラットホーム上でも動作する予定だ)。面白いのは,これが実質的には秘密だったことだ。同社は2006年のベータ版提供に向けてWinFSを準備していたことを決して外部に漏らさなかった。そして誰も現実にはその事実を聞かなかった。WinFSはまさに私たちみんなが最終的には別の場所で目にすることになると思い込んでいた技術だったのだ。結局のところそうなった。

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写真1
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 ではWinFSベータ1とは何なのか?SQL Server製品のマネージメント担当ディレクタであるTom Rizzo氏によれば,その目標は変わっていない。

 「私たちはWindows用のリッチなリレーショナル・ファイル・システムを構築している。WinFSによって私たちはデータの組織化と視覚化のためのリッチな新しい方法を提供するつもりだ。そして最終的には,それは1つのプラットホームになる。エンドユーザーのためだけではない。開発者はWinFSを拡張したり,自分たちのアプリケーションとWinFSを統合したり,自分のアプリケーションとプライベートなデータベースとWinFSの間でデータを同期させられるようになる。独自のデータ型をWinFSに組み込むことも,完全な機能を備えたマネージ・コードのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で可能にする」

Windows XPにWinFSベータ1をインストールしてみた

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写真3
写真4
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 実際にWinFSをインストールしてみよう(写真1)。準備として非常に特別な(そして新しい)バージョンの.NET Framework(2.0.50215.322)が必要で,NTFSベースのシステムにしか導入できない。インストールが終わったら,再起動が必要である。Windowsが起動したら,My Computer(マイコンピュータ)ウインドウ(写真2),またはMicrosoftが置いた,シェル名前空間内に新しいトップレベル・オブジェクトが現れる。このオブジェクトは「WinFS Stores」と呼ばれ,賛否両論を呼んでいる。

 長所から説明しよう。WinFSはリアルなものだ。その中にはデータを保存できるし,一番大事なこととして,WinFSベースのデータには既存の(レガシーと呼んでもいい)あらゆるWindowsアプリケーションがアクセスできる。

 「WinFSベータ1の一番面白い点の一つは,どのWin32 API(アプリケーション)からでもネイティブにアクセスできることだ。例えばWindowsエクスプローラで表示可能で,その中ではシステム内のドライブの1つに見える。Microsoft WordからもWinFSにドキュメントを保存可能だ。WinFSの内外にデータを移したり,作成者や最終更新日などを変えたりした場合でもそれは完全な互換性がある。WinFSは既存のアプリケーションともうまく協調して動く。コピー&ペーストなど何でも可能だ」

 次は短所を説明しよう。WinFSは急いで作られたように思える。完全にOSに統合されてはいないし,サード・パーティの開発者が本当に革新的なアプリケーションでWinFSをサポートしなければ,この技術は誰にとっても面白いものにはならない。

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写真6
写真7
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 ともかく,エンドユーザーにとってWinFSベータ1はあまり便利ではない。トップ・レベルのシェル・オブジェクトを除けば,見るべきものはあまりない。[WinFS Stores]レベルの下には,[DefaultStore]という名前のストア(保存場所)が作成されている(写真3)。そこには右クリック・メニューのオプションで新しいストアを追加できる(写真4)。ストア作成の際は,それに名前やコメントを付けられるし,そのデータの保存先ボリュームを指定できる(写真5)。ただし,ストアへのショートカットはデスクトップ上に作成できない(恐らくベータ1のバグだろう)。

 データをWinFSのストアにコピー保存する場合に表示されるファイル・コピーのダイアログは標準的なものでなく,Windows XPでいつも目にするものとも違う(写真6)。さらにMicrosoft Officeの[Open(開く)]ダイアログ経由でWinFSにアクセスしようとすると,期待を裏切ってMy Computerの中にストアが現れない。その代わりにNetwork Places(ネットワーク・プレース)の下の共有として現れる(写真7)。さらに,ストアの中をナビゲートしたり,ドキュメント・ファイルをダブル・クリックしてそのドキュメント・タイプを持つアプリケーションを起動させたりするためにエクスプローラが使える。[Save As(名前を付けて保存)]は通常通りに利用できて,WinFSのストアは(共有として)見える。

 WinFSの本当にパワフルな点は,もちろん,開発者がそれを操れるようにしたことだ。Microsoftは開発者がWinFSとWinFS APIのヘルプ・ファイルや関連文書を利用しやすくするために「Getting Started」というアプリケーションを内蔵させた(写真8)。WinFSの開発者向け機能を完全に調べる時間はまだないのだが,必ず調べたい。

完成は2007年第3四半期の予定
 MicrosoftのRizzo氏は私に,同社が開発者向け会議PDC 2005の2週間前にWinFSベータ1を出荷したと話した。開発者がそれを試すのに時間をかけられるようにし,それからPDC開催期間やそのあとでフィードバックを出せるようにするためである。しかし最近,私はWinFSのリリース・スケジュールをもっと完全に近い形で書いたMicrosoftの内部文書を見ることができた。WinFSベータ1の後には少なくとも1つのCommunity Technology Preview(CTP)が出るはずで,それは今のところ2006年2月15日に予定されている。その後2006年5月1日に,WinFSベータ2が出る予定である。ベータ3は今のところ2006年11月15日に予定されており,ベータ3のリフレッシュ・リリースが2007年4月に予定されている。WinFSは今のところ2007年第3四半期にRTM(製造工程向けリリース)になって完成する予定で,これはLonghorn Serverのリリース後である。

 完成すればWinFSは今日の.NET Frameworkと同じように,Windows XPやWindows Vistaの追加アップデート・モジュールとして提供されるだろう。Microsoftはまだライセンス体系を決めていないが,たぶん無料になる。さらにWinFSはおそらくLonghorn Serverに内蔵される。同システムのアドオンとして提供される可能性もある。

 最後に,WinFSは開発コード名に過ぎないことを記しておこう。この技術が完成するころには,「Windows Storage Foundation」という名称に再度変更されるに違いない。

価値について判断を下すのはまだ早すぎる
 WinFSの価値について判断を下すのはまだ早すぎる。しかし私はMicrosoftが開発の進行(と突然のベータ1提供)を秘密にできたことは注目に値すると感じた。同社がいつも提供の遅れを批判され続けてきた中で,WinFSベータ1のリリースは好感の持てるものだ。Microsoftがこれから何ヵ月もこういう前向きな調子で私たちを驚かせ続けてくれることを期待しよう。