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■一口にドメインと言っても,汎用的に利用できるドメインと,国別に割り当てられたドメインがあるのをご存知だろうか。今回はこれらドメインの種類にまつわる話題を取り上げる。



 ドメインには,大きく分けて「gTLD(Generic Top Level Domain)」と「ccTLD(Country Code Top Level Domain)」の2種類がある。前者は,「.com」や「.net」「.org」といった特定の国に依存しないものであり,後者は「.jp」や「.us」など,国ごとに割り当てられているカントリ・コードを基本にしているものである。ピリオドで区切られたドメイン名の最後の部分が「Top Level Domain」と呼ばれるのは,ドメインは右側から解釈されるためである。

 例えば,「nikkeibp.co.jp」のように日本の会社でよく使われている「.co.jp」は,「jp」がTop Level,「co」がSecond Levelを表す「属性jp」と呼ばれるドメインである。これに対して「nikkeibp.jp」のように「.jp」だけで登録するのが「汎用jp」ドメインである。日本では長い間,属性jpドメインだけが使われており,汎用jpが登場したのは2001年のことである。

 また,米国で「汎用us」ドメインが登場したのは,さらに遅く2002年になってからである。それまで「.us」は,「名称.種類.2文字の州名.us」という変わったスタイルでしか使われていなかった。例えば,サンフランシスコ公共図書館は「http://sfpl.lib.ca.us/」という具合である。経済大国の米国で汎用usの使用が始まったことで,相当数の「.us」ドメインが登録された。また,高値で取引されている例も見られる。

 さらに急増しているのが2003年に始まった「汎用cn」ドメインである。今や「.cn」ドメインは全体で83万件と,76万件の「.jp」ドメインを抜く存在となっている(お名前.comのニュース)。これには急速な経済成長,ドメイン価格の下落(年間4ドル程度)という理由に加えて,投機的な思惑も推察される。特に「google.cn」や「google.com.cn」というドメインについて(googleはgoogolという言葉に基づく造語),google側の訴えが認められず,googleがこれらのドメインのために100万ドル以上を支払うことになったというニュースはドメインへの投機をあおる要因となった。

gTLD——汎用的に利用できるドメイン

 数あるドメインの中でも圧倒的に使われているのが,インターネット時代を代表する言葉としても使われるドット・コム,つまり「.com」である。現在,4000万近くの「.com」ドメインが登録されており(ICANNの月刊レポート,6月版),これは「.net」の約610万を圧倒的に上回っている。「com」はCommercialを意味しており,「.com」ドメインは商用サイトを表す。また,「net」はNetworkを意味しており,「.net」ドメインはネットワーク関係のドメインであることを表す。ただし,これらの目的以外で使われることも少なくない。

 古くからあるgTLDとしては,これ以外に「.org」(Organization,組織),「.gov」(Government),「.edu」(Education),「.mil」(Military),「.int」(International)などがある。“generic”なドメインといっても,「.gov」「.edu」「.mil」は米国の機関にのみ登録が許されているものだ。.intは国際機関を表しており,例えば国連のWebサイトは「http://www.un.int/」である。

 また,2001年には「.info」という新しいgTLDが登場した。情報(information)の提供を目的としたサイト向けである。これに続き,2002年にはビジネス(business)サイト向けの「.biz」が登場し,その後も航空業界向けの「.aero」をはじめ,「.pro」「.name」「.museum」「.coop」など,新たなgTLDが増え続けている。

 特に「.pro」は医師,会計士,弁護士といった職種(professional)に限定し,これらの「証明書」を提供しないと取得できないものだった。実際には,その確認費用も含むため,登録費が高額(500ドル程度)であり,ほとんど活用されることがないまま「汎用pro」という当初の目的を離れた登録が認められることになった。「.biz」も当初は「ビジネス・サイト」を構築する人向けとなっていたが,その条件はほとんど意味をなしていない。

 「.name」も同様で,当初はSecond LevelとThird Levelで「姓」「名」を表す個人向けのものという位置付けだったが,ほとんど利用が進まず,Second Levelのみの「汎用name」とでもいうスタイルが受け入れられることになった。

 新規のgTLDは,それぞれTLDが表すサイト用のものという位置付けなのだが,実際にはあまり人気がなく,上記のように制限が有名無実化しているのが現状である。しかし,それでもgTLDは増え続けている。最近では,アダルト・サイト向けの「.xxx」というgTLDも計画されている(※注 現在,最終判断が保留されており,運用が見送られる可能性も高い)。

ccTLD——特定の国に依存するドメイン

 ccTLDは,特定の国に依存するドメインであり,末尾の2文字の略称によって表される。 カントリ・コードを表す2文字の英字は,原則としてISO 3166-1に従っている。例えば,日本(Japan)は「jp」,米国(United States)は「us」,ドイツ(Deutsche)は「de」,中国(China)は「cn」である。ただし,いくつか例外がある。イギリスの正式名称は「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」であり2文字略称は「gb」だが,実際には「uk」が使われている。

 また,チェコスロバキア(Czechoslovakia)がチェコ(Czecho)とスロバキア(Slovakia)に分かれるといった場合など,ISO 3166-1が変更されることもある。この場合は,チェコスロバキア(cs)からチェコ(cz)とスロバキア(sk)になった。現在,ISO 3166-1において「cs」は2003年にユーゴスラビアから改名されたセルビア・モンテネグロ(Serbia and Montenegro)を表すことになっているが,このccTLDはまだ利用可能な状態にはなっていない。

 当然ではあるが,ccTLDはその国で作られるWebサイトのために使われることが多い。最も登録数が多いccTLDは「.de」であり,その数はgTLDの「.net」をはるかに上回り,800万を超えている。ccTLDとしては「.uk」が370万の登録数で続いている。これらに比べれば,わが日本の「.jp」の76万件という数字はまだ少ないが,着実に数を増やしていることに違いはない。

「カントリ」を表さないccTLD

 ccTLDの中には,特定の国を表さなくなっているものもある。この典型的なのものが「.tv」ドメインである。tvは,もともとツバル(Tuvalu)という小国のために用意されていたカントリ・コードだが,テレビ(TV=Television)を表すドメインとしてこれを使おうと考えたベンチャー企業(The .tv Corporation)によって2000年に汎用tvを登録する権利が購入された。この利益によって,ツバルは国連加盟を果たした。このときの価格は10年間で4万ドルだそうだが,その後,VeriSignが4500万ドルでこの企業を買収した。

 「.tv」ドメインは,日本でも使われているケースがあり,比較的知られている方だろう。通常,ドメインの登録・維持費は,登録業者やTLDによって変わるものの,登録する名前の部分(Second Level)による違いはない。しかし,「.tv」では「魅力的なドメイン」は登録・維持費を高額に設定するというモデルを作り上げた。例えば,japan.tvはプレミアム名として年間5万ドルの維持費が必要になる。news.tvの維持費は年間100万ドルだ。

ドメイン登録の収益で,全島民にブロードバンドを無料提供

 「.tvはccTLDとして成功を収めた方だが,実際小国にとっては,ccTLDの権利を貸す方がよい場合もある。同じような例として,西サモア(Western Samoa)の「.ws」ドメインをWebSiteの略称として使ったり,ベリーズ(Belize)の「.bz」ドメインをBusinessの略称として使ったりしようとするケースがある。人口2000人のニウエ島(Niue Island)は「.nu」ドメインの登録を海外に開放することで,全島民にブロードバンド接続を無料で提供している。

 また,ドメインに詳しい人は「.np」をニッポン(Nippon)ドメインとして使おうとしていた企業(日本ニュードメイン)があったことをご存じかもしれない。これは,もともとネパール(Nepal)のccTLDである。いずれにせよ,.tv以外はそれほど認知度が高くない。

 自国のccTLDを使う場合はまず問題ないが,上記のように「gTLDが取得できなかったから仕方なく使うccTLD」の場合,必ずしも安心できないケースがある。例えば,「.np」ドメインを扱っていた日本ニュードメインは2003年に設立されたのだが,2005年に入ってサービスを停止した(ネパール情勢の悪化が理由と説明されている)。

 本来,その国の人々が登録すべきccTLDを他国が登録するためには,そこに投資している企業があるわけだが,その企業が必ずしも磐石な体質であるとは限らない。特に,1つの登録業者だけが扱っているようなマイナーなccTLDは磐石な体勢を持たないベンチャーによって運営されていることもあるので,注意が必要である。

ccTLD好きの日本人

 実は,こうしたマイナーなccTLDを好んで登録しているのは日本人が多い。海外のドメイン・フリークにも「なぜ,日本人はccTLDを使うことが多いのか」と聞かれたこともあるくらいだ。

 かつてgooを運営するNTTレゾナントがBROBAというサービスを「broba.cc」いうドメインで始めたのは相当な驚きであった。「.cc」ドメインはVeriSignの関連会社により管理されているため不安なccTLDではないが,これほどの大企業がccTLDドメインを使う例は少ないと思う。これは「broba.com」ドメインが登録済みだったための苦肉の策だったのだろうと推察するが,NTTレゾナントは「broba.jp」を登録しているので,これを使えばよかったように思う。なお,今は「broba.cc」は「goo.ne.jp」の一部に転送されるようになっている。

 これは特別な例かもしれないが,欲しい名前が「.jp」や「.com」のように一般的なTLDで取れない場合,名前を変える代わりに,ccTLDで取ってしまうというのは日本人の特徴的な行動と思われる。これは全くお勧めできない。ドメインを使うのは,そのWebサイトをすぐに覚えてもらったり,訪れてもらいやすくするためでもある。「.np」や「.ws」といったものは,これを「ドメインの一部」だと認識してもらうだけでもハードルが高い。

 さらに,マイナーなTLDによるサイトの運営はほかの(よりメジャーな)TLDで意図しないサイトが運営されてしまう恐れもある。日本では「goo.co.jp」に対する「goo.ne.jp」の訴え(ブランドの悪用)が認められたが,gTLDにも通用するとは限らない。事情がなければ,「.com」や「.net」のように,よく知られているgTLDや「.jp」ドメインを使うべきなのだ。

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