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■今回は,具体的な企業のシステムを想定して,MOMのシステムを導入していく方法を紹介する。インストール作業のほとんどはウィザードで進むが,事前に決めておくことがいくつかある。
■システム設計では,4つのコンポーネントとそれらを結びつけるネットワークの仕様を決定しなければならない。また,3種類の専用サービス・アカウントを使用するため,セットアップ前に作成しておく。

(2006年1月号「MOMで始める一歩進んだサーバー管理」より)

(吉田 かおる=NECラーニング)




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図1●今回想定する環境
 前回は,MOM(Microsoft Operations Manager)2005を使ったサーバー管理の概要について紹介した。複雑化するサーバー管理を,MOMがどのように効率化するかが理解いただけたであろうか。今回は,一歩踏み込んで企業システムにMOMを実際に導入する方法を解説したい。

 MOMは小規模から大規模までのシステムをカバーするサーバー管理ソフトであり,その規模に応じて,導入方法も異なってくる。今回は図1に示すような仮想の企業にMOMを導入する手順を紹介していくことにしよう。

 この企業では,Windows Server 2003が稼働するサーバーが50台あり,そのすべてをMOMで管理する予定である。50台のサーバーのうち,45台を本社と各支社に設置し,ファイル・サーバーや業務アプリケーション・サーバーとして使用している。本社と各支社は高速な通信回線で結ばれている。残り5台は,DMZ(非武装地帯)を使ってインターネット上に公開されているWebサーバーとメール・サーバーである。

MOMのコンポーネントを理解する


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図2●MOMのシステム構成
 MOMを導入するためには,まずMOMシステムのコンポーネントを正しく理解しておく必要がある。図2はMOMシステムのコンポーネントの全体像だ。分類すると,次の4つのコンポーネントから構成されている。

(1)MOM管理サーバー
  MOMの中心となるサーバー・コンポーネントで,管理対象のWindowsサーバーからイベントとパフォーマンスのデータを収集し,そのデータをデータベース・サーバーに記録する役割を果たす。

(2)MOMデータベース
  SQL Server 2000以降を利用して構成するデータベースで,MOM管理サーバーが収集したイベントとパフォーマンスのデータを短期間,保管する。

(3)管理対象のサーバー
  MOM管理サーバーにイベントとパフォーマンスのデータを提供する。管理対象のWindowsサーバー1台ずつにエージェント・ソフトを導入する。

(4)コンソール
  システム管理者向けのユーザー・インターフェースを提供するツール。MOM管理サーバーの設定に使う「管理者コンソール」とエージェントを導入した管理対象サーバーの情報を監視する「オペレータ・コンソール」の2種類がある。

 なお,MOMでは,Active Directoryドメインは必須ではなく,ワークグループ構成のWindowsサーバーも管理可能である。ただし,Active Directoryドメインがあれば,通信のセキュリティ向上やサービス・アカウントの権限割り当てが容易になるなどの利点がある。

管理対象に応じてシステムを設計
 では,今回想定する環境を例に,MOMの導入手順を説明していこう。  最初はシステム設計である。MOMのシステムでは,4つのコンポーネントとそれらを結びつけるネットワークの仕様を決定しなければならない。


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表1●MOM管理サーバー/MOMデータベース・サーバーのシステム要件(共通)
 1番目に「MOM管理サーバー」の仕様を決めよう。MOM管理サーバーは,新しく追加しなければならないコンピュータである。管理サーバーに要求されるシステム仕様は表1の通りになる。この仕様でMOM管理サーバーは,約2000台までのエージェントを管理可能だ。

 今回想定する環境では,管理対象サーバーの数が50台と少ないため,負荷はそれほど高くないと考えられる。そのため,新しいコンピュータを1台,用意すれば十分である。

 もし,MOM管理サーバーがダウンしても管理を継続したければ,もう1台のMOM管理サーバーを用意して処理を引き継ぐようにシステムを構成できる。今回は,主に監視目的でMOMを使用しているため,MOM管理サーバーがダウンしても,管理対象サーバーに与える影響は少ないと考えられる。そのため,2台目のMOM管理サーバーは用意しない。

 2番目に,MOMデータベース・サーバーの仕様を決定する。MOMデータベースのシステム要件は,表1に示したMOM管理サーバーと同じである。MOM管理サーバーにMOMデータベースをインストールしてもよい。今回想定する環境では,MOM管理サーバーの負荷が低いため,MOM管理サーバーと同じコンピュータにMOMデータベースを作成することにする。

 MOMデータベース・サーバーでは,データベースのサイズを見積もっておく。MOMデータベースは,エージェントが送るイベントやパフォーマンスのデータを短期間,保管するデータベースである。そのため,MOMデータベースのサイズは,管理対象サーバーに導入するエージェントの数に比例する。目安としては,1つのエージェントに対して,100Mバイトを用意するとよい。今回は,50のエージェントを管理するため,MOMデータベースのサイズとして,5Gバイトを確保する。


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表2●管理対象のWindowsサーバーのシステム要件
 3番目に,管理対象であるWindowsサーバーにエージェントがインストールできるかを確認する。エージェントのシステム要件は,表2を見てほしい。エージェントはWindows NT Server 4.0(Service Pack 6a)以降のバージョンのWindowsサーバーOSで稼働する。このシステム要件を満たさないWindowsサーバーの場合は,Service Packの適用やバージョンアップなどの準備が必要だ。今回は,すべての管理対象サーバーが,Windows Server 2003であるため,特に準備の必要はない。


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表3●管理者コンソール,オペレータ・コンソールのシステム要件
 4番目に,追加でコンソール・プログラムをインストールする必要があるかを決定する。既定では,MOM管理サーバーにコンソールがインストールされるが,表3の要件を満たせば,Windows XPなどが稼働するクライアントPCにコンソールを追加することもできる。MOM管理者とWindowsサーバーの管理者のクライアントにそれぞれMOMのコンソールをインストールすれば,各自がネットワーク経由でMOM管理サーバーを管理したり,MOMの機能によりWindowsサーバーを監視したりできる。あらかじめ,MOMの管理者とWindowsサーバーの管理者をリストアップし,どのコンピュータにコンソールを追加インストールするべきかを決定しておく。


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図3●MOM 2005 Seizer
 最後に,MOM管理サーバーとエージェント間のネットワーク環境を整備する必要があるかどうかを判断する。ただし,MOM管理サーバーとエージェントの間で交換されるデータは,限定的なイベントとパフォーマンスのデータで,それほど,多くのトラフィックは発生しない。基本的に64kビット/秒以上の回線があれば,問題なく機能するように設計されている。この記事では,本社と各支社のネットワーク回線は高速であるとしたため,回線の増強は不要である。

 マイクロソフトのWebサイトには,米MicrosoftのMOMパフォーマンス・ラボで実際に調査したデータを基にシステムを設計できる「MOM 2005 Seizer」というツールも用意されている(図3)。エージェントの数と保管するデータの日数を入力するだけで,必要なMOM管理サーバーの台数やスペック,確保すべきデータベースのサイズなどを教えてくれる便利なものである。