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 公的個人認証の利用者クライアントソフトに不具合が発見された問題(関連情報)について、ソフトの発行元である自治体衛星通信機構(http://www.lascom.or.jp/)は、不具合情報を把握してから半月以上も情報を開示していないことが明らかになった。

 利用者クライアントとは、電子申請などを行うときに利用する公的個人認証サービスで、市町村役場で電子証明書の発行を受けたときにCD-ROMで配布される。今回の不具合は、ソフトをインストールしたWindowsの環境変数の一つPATHが1006文字を超えている場合、それまでのすべてのPath環境変数を利用者クライアントソフトのPath環境変数である「C:\Program Files\JPKI」と上書きしてしまう、あるいはPath環境変数を追加できないというもの。これにより、最悪の場合、利用者クライアントソフトをインストールしたパソコンの一部アプリケーションや、利用者クライアントソフト自体が動作しなくなる可能性がある。

 この不具合は、筑波大学の登大遊氏が運営するブログの8月31日付の投稿(http://d.hatena.ne.jp/softether/20050831)で明らかになった。登氏はこの不具合について「おそらくソフト本体ではなく、インストーラー作成時のミスで発生したものではないか」と推測している。また開発ツールなどを複数インストールしている場合はPATHが1006文字を超えてしまうとしている。

 同機構では8月31日の段階で通報により不具合を把握し、開発元のソフトメーカーに調査を依頼した。その結果、9月7日には通報のあったWindows XP環境で不具合が起こることを確認した。翌8日には全国の都道府県に「一定の条件のもとで不具合が生じる」という内容の情報を電子メールで送った。

 翌9月9日にはソフト製作会社からWindows NT4.0、同2000、同XPで、一定の条件の下で不具合があることの報告を受けた。そこで、同機構では今後の対策を検討した上で12日の夜に各都道府県に電子メールで「ほかのOSでも不具合が発生する可能性があり、そのことを市町村に連絡してほしい」という旨の連絡を行った。

 ただし、都道府県に対しては情報を伝達したのみで、ソフトの配布停止の依頼や、利用者への情報開示の依頼は行っていない。このため、現場の市町村では、不具合について何の説明もせずに利用者にソフトを配布する体制が16日まで続いていた。一部の自治体では独自の判断で配布停止を検討している段階である。同機構では「通常から市町村窓口には質問や疑問点があれば同機構に連絡をするような体制は整えている。窓口が問題だと思ったら個別に連絡が来るだろう」(同機構公的個人認証サービスセンターの田代信司副センター長)とコメントしている。

 同機構では当面の対策として、20日から(1)市区町村の窓口で公的個人認証の電子証明書の交付申請をした人に注意書を配布できるよう手配する、(2)公的個人認証ポータルサイト(http://www.jpki.go.jp/)で告知する、(3)同機構に電話と電子メールによるヘルプデスクを設置することを決めている。CD-ROMの配布停止はしない方針だ。今後、修正版ソフトの再配布方法について、CD-ROMの再配布やダウンロードによる再配布も含めて検討に入る。また、今後は不具合があった場合の通報窓口や対応体制作りを検討している。

 今回の対応の遅さについて同機構は、「今回の不具合はあらゆるパソコンで起こるものではなく、一定の環境下で起こる問題。不具合が起こるメカニズムも一般の人には説明しにくい。問い合わせに対して確実に説明し対応をする体制を整えるために時間がかかった」(田代副センター長)としている。緊急時の対応については同機構と総務省自治行政局自治政策課、公的個人認証サービス都道府県協議会の三者で協議をした上で対応を検討すことになっているため、迅速な対応が取れなかったという背景もあるようだ。

 利用者クライアントソフトは、2003年末に開発され、2004年1月の公的個人認証のサービス開始と同時に配布された。同機構が市区町村に配布したCD-ROMの枚数は26万5000枚、2005年8月末で公的個人認証サービスによる電子証明書の発行枚数は総務省の発表によると9万4767枚。配布開始以来バージョンアップは一度も行われていない。(塗谷隆弘)

<9月20日編集部追記>

 9月20日、公的個人認証ポータルサイトに「利用者クライアントソフトのインストール時における不具合に関するお詫びと留意事項について」という情報が掲載された(http://www.jpki.go.jp/client/info050919.html)。今回の不具合はWindowsのPath環境変数の設定値により起こる症状が違う。そこで、該当するOS、起こりうる不具合、Path環境変数設定の確認方法などが記載されている。また、内容に関する問い合わせを受け付ける問い合わせ窓口は、電話:0120−199260、メール:jpki-soft@lascom.or.jpで受け付ける。