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筆者紹介 横井正紀(よこい・まさき)

横井正紀氏の写真 野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部上級コンサルタント。1985年筑波大学基礎工学物質分子工学類を卒業。メーカーの研究部門(オフィスシステムおよびワークスタイル)を経て野村総合研究所に転籍。現在はリサーチ&コンサルティングに従事。専門はオフィス環境論、情報通信分野における技術動向分析と事業化支援、ならびに事業戦略立案。

 医療は病院内だけではなく病院外での措置や対応も念頭においておく必要がある。その概念として日本でも定着してきたのが、メディカルコントロール(MC)である。

病院に到着する前におこなうMCとは、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置などの質を保証することを指す。そのためには、以下の3点を重点的に、かつ相互に連携を図りながら、体制の整備に努めることが必要である。

(1)常時支持体制
救急隊が現場から24時間いつでも迅速に救急専門部門の医師等に指示、指導・助言が要請できること。
(2)事後検証体制
実施した応急処置などの医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行い、その結果を再教育に活用すること。
(3)再教育体制
救急救命士の資格取得後の再教育として医療機関において定期的に病院実習を行うこと。

 MCは、応急処置などの質を保障することと同時に、救急救命士が安心して業務に従事できる体制づくりを目指すものである。事前のMC、そして事後の検証にあたっては、プロトコール(手順書)が重要な役割を果たす。従って、プロトコールは地域メディカルコントロール協議会(注1)で十分に協議するとともに、救急救命士等に周知徹底することが必要である。

(注1)地域メディカルコントロール協議会は、都道府県消防主管部局・衛生主管部局、消防機関、郡市区医師会、救急医療に精通した医師等で構成され、病院前救護にかかる消防機関と医療機関の連絡調整、業務のプロトコール、マニュアル等の作成、常時指示体制の整備、検証医の選定及び事後検証票の作成等を含めた事後検証体制の確保、並 びに救急救命士の資質向上のための研修機会の確保に関する支援等の役割を担う。

 MCには、オンラインMC(on-line medical control)とオフラインMC(off-line medical control)があり、近年はそれぞれdirect medical controlとindirect medical controlとも言われている。

 オンラインMCは、医師が直接、または個別に現場の救急救命士や救急隊員に対してMCを実施することである。現場での直接指導や電話による特定行為の指示、そして心電図伝送などがその一例である。一方、救急救命士や救急隊員に対する教育やプロトコール(手引書)の作成、事例検討によるMCをオフラインMCと呼ぶ。米国では、救急医療システム確立過程の初期にあっては医師によるオンラインMCを多く必要とした。また、システム確立過程の成熟期にあっては、オンラインMCとオフラインMCの双方が重要であるとしている。

 MCの実施に当たっては、それを施行する医師同士の間で、また施行する医師と現場医師の間で、できる限り「整合性」を保つことが重要である。「整合性なきMC」はそれを受ける救急救命士や救急隊員、さらには消防本部関係の各部署全体へ混乱をもたらすことになってしまう。

 オンラインMCを行う場合、ネットワークや映像コミュニケーションを適切に利活用する環境が必要となる。言語だけのコミュニケーションによらず、動画やホワイトボードに図示する絵によって適切な指示を伝達することは、救急時の緊迫した現場のコミュニケーションとして重要だからだ。ただし、救急車から、診断に耐えうる画像を断続的にしろ搬送先の病院に伝送することは、技術面ならびに運用面などでいくつかの課題が残されており、実用までには今しばらくの時間を要すると考えられている。

■オンラインMCを支える要素技術

 次に、MCのために必要とされる画像情報、ならび画像データの種類などについて解説する。

 オンラインMCでは、救急車と病院間のコミュニケーションの高度化は必要不可欠になってくる。この救急車と病院の間のコミュニケーションを踏まえ、それらを支援するシステム要素を考えると、のようになる。

■救急車と病院のコミュニケーションで必要になる要素 救急車と病院のコミュニケーションで必要になる要素

 この図は、基本的に入力装置、ネットワーク、出力装置という枠組みで、救急車から病院、また病院から救急車という流れを想定して、それぞれの領域で必要となる要素を記載したものである。ここでのコミュニケーション全般で必要になるのは、セキュリティと通信のQoS(Quality of Service)である。

 セキュリティは、伝送する情報が個人情報である点、またデータの性格上秘匿性を必要とするケースが高いことに起因する要求項目である。エンド・トゥ・エンドでのVPNや暗号化などの技術がここに適用されるべきものと想定される。

 QoSの規定はきわめて重要である。緊急時に意思決定をするための情報を送受信するにあたって、これら情報を手がかりに業務をする人に誤解やストレスを与えないためには、エンド・トゥ・エンドでのある一定レベルの品質を維持する必要がある。QoSのレベルによっては、動画像を通信しないで静止画像のブロックデータを送るなどの処置を、ネットワーク側からの要件システム全体に取り込むことが要求されるであろう。

 救急車、ネットワーク、病院というセグメントで、救急車側に装備されるべき機能を見てみると、そこには2つの機能が必要になっている。一つはハンズフリーカメラなどのデバイスソリューションである。

 そしてもう一つは、医療機器のインタフェースとしての機能である。現在は、メーカーごとにインタフェースが異なり、ネットワークを構築したりデータを伝送する上で、異機種や異メーカー間では容易に環境が構築できないことがある。さらに、医療機器のIPネットワーク化のためには、ネットワーク側とのインタフェースも重要な要素機能となるといえる。つまり、救急車が基地局機能を担うのである。