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文・坂本真理(日立総合計画研究所政策経済グループ 研究員)

 評価専門調査会は、我が国のIT戦略に関する政府の取り組みを評価するためにIT戦略本部の下に2003年8月に設置された民間の有識者による組織です。2003年12月以降、評価専門調査会はほぼ月1回のペースで会合を実施しており、2005年12月には過去2年間にわたる評価活動の総括として「評価専門調査会 報告書 -先端から先導へ-」をIT戦略本部に提出しました。この報告書の中で、我が国の電子政府・電子自治体に関する国際的な評価として、

  1. 先端的な電子政府基盤が整備されたが利用者にその恩恵が実感されていない
  2. 最適化計画策定やCIO・CIO補佐官制度の導入は評価されるが行政自らが課題を認識し解決する体制やIT投資への費用対効果の検証が十分ではない
といったことを述べています。そして、今後に向けた提言として、
  1. 国民が利用しやすいように煩雑な手続きを簡素化すること
  2. ITの利活用による業務改革を進め、民間活力の積極的活用も視野に入れ、行政全体としてのスリム化・最適化を推進すること
を挙げています。その上で、引き続き取り組みを強化すべき分野として、医療や教育・人材と並んで電子政府・電子自治体を挙げています。

■評価専門委員会のこれまでの活動

第一次中間報告書(2004.3)
(1)PDCAサイクル、(2)利用者視点での成果主義の導入を提言
(重点評価:電子政府・電子自治体、ブロードバンド・ユビキタスネットワーク、教育・人材、医療)
第二次中間報告書(2004.9)
評価の枠組みとして二種類の指標を提案
(重点評価:IT人材、電子政府・電子自治体)
第三次中間報告書(2004.12)
利用者視点での成果評価の枠組み提示
(重点評価:医療)
第四次中間報告書(2005.3)
具体的評価指標案の提示
(重点評価:教育・人材)
第五次中間報告書(2005.9)
新IT戦略に向けた視点の提示
報告書
2年間にわたる活動の総括
評価専門調査会資料から日立総研作成

 評価専門調査会の意義については、大きく次の2つの点が挙げられます。第一は、利用者視点の成果主義という考え方をIT戦略の評価に導入したことです。これまで行政の取り組みが評価される際にはサービスの提供者である政府・地方自治体の視点に立った施策の遂行をもって成果と見なすことが少なくありませんでした。しかし我が国が「e-Japan戦略」で目標とした「世界最先端のIT国家になる」ため、また「e-Japan戦略II」で目指した「『元気・安心・感動・便利』社会を実現する」ためには、利用者視点で成果を追求し評価することが重要であると評価専門調査会は強調してきました。2004年3月に提出された第一次中間報告書を受けて、2004年6月に策定された政府の「e-Japan重点計画-2004」でもIT戦略の遂行に当たっての施策と共に、利用者視点の成果を意識した成果目標が盛り込まれています。

 第二は、PDCAサイクルの観点がIT戦略の遂行に導入されたことです。評価専門調査会がIT戦略へのPDCAサイクル導入を提唱して以降、この考え方は政府において広く受け入れられています。政府が2005年12月8日から2006年1月6日までパブリックコメントを募集している「IT新改革戦略(案)」においても、「評価専門調査会の検証に基づいてIT戦略本部が新たな政策を検討する」というPDCAサイクルの趣旨を取り入れたことが、大きな成果であると言えます。

 政策の評価にあたっては、中立性と実効性を兼ね備え、かつ個別の課題に対し継続的に深く関わり続ける具体的な評価体制の確立が不可欠です。「IT新改革戦略(案)」を遂行する上でもその点は同じで、評価専門調査会は「適切な外部委託や第三者機関の活用、国際的な調査連携等についての組織的、財政的、制度的な担保が欠かせない」と強調しています。その際には民間有識者も含めた外部からの意見を幅広く取り入れる体制を整備することが重要です。なお、評価専門調査会が主張してきた、利用者視点での成果主義とPDCAサイクルという考え方は、政府のIT戦略のみならず、地方自治体の行政評価においても重要なコンセプトといえるでしょう。