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現場担当者が悩む七つの疑問を取り上げる。Part1で解説した手法は,あくまでも手法に過ぎない。現場での経験を経なければ,実効性のあるものにはならない。ここでは,見積もりの手法を使いこなすノウハウを先人の経験に学ぶ。

 見積もり担当者は,様々な手法を駆使した上で,試行錯誤を繰り返しながら後で困らない見積もりの算出に苦心している。まずは「見積もりの精度を上げるには?」「見積もりミスを後でカバーできる?」など見積もり担当者が疑問に思う七つの問題を取り上げ,現場での工夫からその解決策を探っていこう(表1)。

問題(1) 見積もりの精度を上げるには? 同じようなシステムでも実際の開発工数には大きな差が出る。その原因と対策を知りたい
問題(2) どうしたら納得感が得られる? 算出した見積もりが実感と合わない。このままユーザーに提案したり,体制を組んだりするのは不安がある
問題(3) どういう準備が必要か? まず何をしたらいいのか分からない。正しく見積もるために日常的にどんな作業が必要なのか
問題(4) 要件があいまいな場合は? 要求があいまいなのに見積もりを依頼される。そんな場合でも工数や金額を算出できるか
問題(5) 見積もりは契約で終わり? 見積もりの範囲内でプロジェクトを完遂するためには,見積もった結果をどのように管理すればよいか
問題(6) 手法だけで十分か? LOCFPWBSCOCOMOIIなど見積もりの手法はいくつもある。これらをマスターすれば大丈夫だと言えるか
問題(7) 見積もりミスを後でカバーできる? 要件定義,設計と工程が進むにつれて当初の見積もりと実績が乖離してしまう。どうすれば軌道修正できるか
表1●見積もりを巡る七つの問題

問題(1) 見積もりの精度を上げるには?
解決:ぶれる要因を織り込んでおく

 なぜ同じようなシステムなのに開発工数に差が出てしまうのか。対策はあり得るのか――。

 多くの見積もり担当者に共通する悩みである。勘と経験に優れた担当者なら正確さは増すが,そのスキルによりバラツキが大きく出やすい。

 図1はソフト開発会社ジャステックが作成し,利用している「見積もりリスク要因チェックシート」である。これを使うと,ぶれる原因と対策を可視化し,見積もりに反映させることができる。

図1●見積もりがぶれる要因を洗い出す<br>ジャステックは見積もりがぶれるリスク要因を整理している。要因ごとに工数を上乗せまたは削減する割合を定義しておき,机上で算出した見積もりに加味した上で,見積もりを確定する
図1●見積もりがぶれる要因を洗い出す
ジャステックは見積もりがぶれるリスク要因を整理している。要因ごとに工数を上乗せまたは削減する割合を定義しておき,机上で算出した見積もりに加味した上で,見積もりを確定する
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 チェックシートでは,まず工数を算出するための“開発規模”と“生産性”それぞれについて,見積もりがぶれる要因をすべて洗い出した。その上で,各要因が工数に与える影響を数値化したのである。

 例えば「中核メンバー全員が当該業務経験多数」なら「要件定義」「設計」「テスト」の各工数を10%ずつ引き下げる。逆に「メンバー全員が当該業務経験無し」なら「要件定義」の工数を50%,「設計」「テスト」の工数を10%それぞれ引き上げる。

 これと同様の考え方は,COCOMO/COCOMOIIなど標準的な見積もり手法にもある程度は盛り込まれている。COCOMO/COCOMOIIでは,開発規模に「技術者の能力」や「要求の信頼性」などぶれる要因を係数として掛けることで,開発に必要な期間などを算出できる。