実はルーティングは,「ルーティング・テーブルをどう作るか」という部分を含んでいる。Part2では,自動的にルーティング・テーブルを作るルーティング・プロトコルのエッセンスを見ていくことにしよう。
ここまでは,「ルーティングとは適切な経路を選ぶこと」と定義して話を進めてきた。これは間違いではないのだが,実はルーティングは,「ルーティング・テーブルをどう作るか」という部分も含んでいる。特に,ルーターがほかのルーターと情報を交換して自動的にルーティング・テーブルを作るしくみ「ルーティング・プロトコル」を押さえれば,実際のネットワークでのルーティングが実感できるはず。
そこでここでは,自動的にルーティング・テーブルを作るルーティング・プロトコルのエッセンスを見ていくことにしよう。
手動で設定するには限界がある
では,ルーティング・テーブルを作る方法から見ていこう。
ルーティング・テーブルを作る最もシンプルな方法は,管理者がルーターに情報を書き込んでいくことだ。ルーターへログインし,コマンドを入力しながら一つひとつ登録するのである。この方法は,「スタティック・ルーティング」と呼ばれる。
人間がルーターに情報を教えるので,管理者の意のままにルーターを操れる。しかし,スタティック・ルーティングには限界がある。
ネットワークの構成が変化するたびに,すべてのルーターのルーティング・テーブルを書き換えなければならないのである。
例えば,ルーターにつながったLANケーブルのポートを抜き挿しするたびに,経路が消えたりできたりするから,そのたびに管理者はルーティング・テーブルを書き換える必要がある。ルーターが10台程度なら,まだ大丈夫かもしれないが,数十台を超えると管理しきれないだろう(図1)。
情報がウワサのように広まる
人手では無理があるなら,それを機械で自動化してしまおう――。これが,「ダイナミック・ルーティング」の考え方だ。ルーターが自動的にルーティング・テーブルを作る方法である。
ダイナミック・ルーティングでは,ネットワークのどこかに新しいサブネットが加わったり削除されたりすると,それをルーター自身が検知して,その情報をほかのルーターへ伝える。この情報を受け取ったルーターは,またほかのルーターに情報を伝える。この繰り返しで,ネットワーク上のすべてのルーターに情報が伝わる(図2)。ちょうど,口コミでうわさが広まっていくような感じだ。
また,ダイナミック・ルーティングには,もう一つ別のメリットがある。通信回線などに障害が起こって経路が途切れたら,ルーターはそれを検知し,そこを経由する経路をルーティング・テーブルから削除して,自動的に別の経路を選ぶのだ。そして,この経路がなくなったという情報も,ほかのルーターへ伝える。
通信回線が途切れるのも,ネットワークの構成が変わるバリエーションの一つなので,よくよく考えてみれば当たり前のことだ。しかし,障害が起こっても止まらないネットワークを作れるという利点は非常に重要だ。このため,企業ネットワークやインターネットには,このダイナミック・ルーティングが欠かせない。