PR

プロジェクト・マネジャーとは,どんな役割で,プロマネは普段,何を考えて仕事をしているのだろうか。知っているようで,案外知らない現役プロマネの毎日を新日鉄ソリューションズの高橋幸広氏が実体験を踏まえ,仮想の日記形式で生々しくつづった。想定したプロジェクトは,顧客を会員化して情報を提供するBtoC型のWebサイトの構築である。

某月某日:

 今日,諦めかけていた顧客から連絡があった。「プロジェクト・マネジャー同席で,正式に提案して欲しい」という。担当営業の杉山が,2カ月前からアプローチをしていた案件だが,今日まで連絡がなかった。比較的大口の案件だけに,プレゼンに参加できるようになっただけでも嬉しい。

プレゼンテーション

某月某日:

プレゼン

 客先でプレゼンテーション。営業の杉山,部下のチーム・リーダー2人とで3日がかりで作成したものだ。ポイントは「いかに短期間で品質よく開発するか」に絞った。

 唯一の不安は納期。「Webサイトの稼働日は厳守。遅れは認められない」と念押しされた。これに対し,仕様を確定する日を明確にすること,開発チームと別にテスト専門のチームを設けることを逆提案した。

 コスト増になるためか,この提案に顧客は難色を示す。だが,一歩も譲らなかった。後で杉山から「口調が厳しくなっていましたよ」と言われた。要反省だ。

 しかし経験上,Web系プロジェクトは,ユーザーニーズが後から増え,要件定義に想定以上の時間がかかるもの。最後のテスト段階で時間がなくなり,テストが不十分なまま,稼働日を迎えると,トラブルが続出する羽目になる。

 今回は,それだけは避けたい。

 それには単体テストの段階から,開発とテストを並行して走らせる方法を認めてもらうしかない。明日,もう一度,この体制の重要性について,客先に説明に行こう。

某月某日:

 再び,客先を訪問。テストチーム設置の必要性を説明した。この規模のプロジェクトなら,12人のテストチームを5カ月間,維持することが必要と力説。

 先方の部長は「テストチームなしで開発はできないのか?」,「他社はできると言っているぞ!」などと,途中から怒り気味に。結局,「即断できないので,後日連絡する」と言われる。提案が受け入れられなければ,仕方がない。「縁がなかった」とあきらめよう。

 その後,同行した営業1人,システム・エンジニア4人と,遅めの夕食。互いに精一杯,努力したことを確認。心地良くビールを飲んだ。

某月某日:

 あれから4日が過ぎた。やはりダメかと気弱になりかけた矢先,顧客から「貴社に発注したい」との電話連絡。うれしさをかみ殺し,素知らぬふりをして,当社に決めた理由について確認した。

 すると「他社は,スマートな提案だが,成功する気がしなかった。その点,貴社はスマートさに欠けるが,一緒に頑張ってくれそうな気がした」との答え。苦笑しながらも,小さくガッツポーズを決めた。

開発スタート

某月某日:

 いよいよ今日,プロジェクトがスタートした。流行のテレビ番組にならい,チーム内では「プロジェクトZero」と呼ぶことにした。スケジューリングや開発メンバーのアサインなどには万全を期したつもりだ。これまで何十回と迎えた「初日」だが,今回はそれでも何となく緊張気味。何事もないようにと祈りつつも,神経が高ぶってなかなか寝付けない。

図1●高橋プロジェクト・マネジャーが担当する プロジェクトZeroの概要
図1●高橋プロジェクト・マネジャーが担当する プロジェクトZeroの概要

某月某日:

 今日,とんでもない事実が発覚した。互いに承認した基本設計に基づき,詳細設計に入ったが,顧客と当社の間に重大な認識違いがあることが分かった。原因は「非会員」という言葉だ。

 顧客は,非会員を「まだ会員登録していないWebサイトの利用者」と考えていたが,当方は「会員登録済みだが,ID番号の認証処理を受けていない利用者」だと受け取っていた。

 今日の「詳細設計レビュー会」でこれが判明したのは,ラッキーだった。このまま発覚しなければ,恐らくテストフェーズまでそのまま。大幅な手戻りが発生しただろう。

 ただ,どちらに責任があるとも言い切れない「グレーなミス」。すぐにプログラムやドキュメント類を見直す一方,「手戻り工数」のコストについては,両者が折半で負担することで話がついた。一安心。

 今回の件も,突き詰めれば,短期開発に原因がある。短い期間で仕様を作るため,仕様書に細部の記述がなかったり,レビューが甘くなる。それにしても「日本語は難しい」と改めて思う。

某月某日:

 テストチームのメンバーがそろわない。予定は12人だが,確定したのは8人しかいない。残る4人を決められずにいる。

 すでに開発は,ピークに差し掛かっている。だがテストチームの人数が少ないため,テスト待ちのプログラムが100本を超えてしまった。

 そのせいで現在のテストチームは連日徹夜。無理を承知で頑張っているが,進ちょくは予定より2週間遅れだ。プログラムの品質が,予想以上に良いのが救いだが,このままでは挽回は難しい。明日の面接に期待することにして,とりあえず就寝。

某月某日:

 今日も,テストメンバー探しに明け暮れた。旧知の協力会社の営業から紹介を受けた候補者と面接。

 「この人なら大丈夫か」,「いや,昨日の人の方が良かったかも」。候補者を目の前にしながらも,色々な思いが頭を駆けめぐる。

 だが,プロジェクト・マネジャーが悩んでいては,プロジェクトは前に進まない。本当にメンバー選びは,悩ましい。だが「急がば回れ」と自分に言い聞かす。